セフィロス先生vv 24

ひんやりと冷たい風にもう冬なんだな…と改めて思う。
…母さんオレ推薦受かったよ。
手を合わせて話し掛ける。
冬の墓地は閑散としている、訪れる人はあまりいない。
…色々心配掛けたけどもう大丈夫だからね、寮費と学費の他にちゃんとお金がでるし、母さんが貯めてくれたお金もある。母さんの生命保険だけではまだまだお金は返せないけど、高校出たらオレ働くから。
伯父たちはそこまでしないでいいと言う、だけどこれは義務とかそんな問題じゃない。

…きっと母さんも無理はしないでいいと言うかもしれないけど、オレがそうしたいんだ。

あの時は解らなかったけど今は解る。父のせいで家族の全てを失ったあの人はクラウドの母を責める以外に怒りのやり場がなかったのだ。
そして、それを解ったからこそ、自分の夫がかけがえのないものを事故とはいえ奪ってしまった責任を感じたからこそ、クラウドの母は、保証金を払う事にしたのだろう。

…オレも父さんの子だから、ちゃんと責任をとるよ。

こんなふうに考える事ができるようになったのもセフィロスのおかげだ。
クラウドは思う、母さんが死んだとき、世界が止まったと思った。

世の中の全てが動くのを止めてしまったと…
セフィロスだけが動いて見えた…
セフィロスだけが感じられた…
セフィロスがいなかったら…オレは耐えられなかったかもしれない。

だから初めてクラウドは事故の被害者に我が身を置き換えて考えてみる事ができたのだ。

母さんとセフィロス、一度にいなくなってしまったらオレはきっと狂っていた、それが人の起こした事故ならその人を憎んで憎んで…
だから、オレは両親のかわりにちゃんと最後までお金を払う…

…どんなに母さんに怒られてもね
クラウドはクスッと笑った。


人の気配を感じてふりむいた。
見覚えがない中年の女の人が、片手に菊の花を持っていた。

…オレ以外にもこんな寒い季節にお墓参りをする人がいたのか…
ぼんやりそう思って、その場を立ち去ろうとして声を掛けられた。

「ひょっとしたら、クラウド君?」
「はい、そうですけど…」

知らない人だ、誰だろう…
その女の人は次の言葉をだすのを躊躇しているようだった。

「あの…母の会社のかたですか?」
ひょっとしたら、葬式に来ていた人かもしれないと思ってクラウドは尋ねた。
その人はずいぶん迷った様な顔をしていたが、やがて決心したように言った。

「覚えてないでしょうね、無理はないわ。あなた小さかったから…私、あなたのお父様の事故の相手です。」

言われた瞬間記憶が蘇った、病院のベッドで包帯だらけだった女の人…
母を口汚く罵った人…

「大きくなったわね…」
その人はひどく懐かしそうな顔をして、クラウドを見た…

ホテルのラウンジで、セフィロスはコーヒーを飲んでいた。
昨日、クラウドの推薦合格が決定したので、今日はこのホテルの最上階のレストランで、合格祝いをすると約束しているのだ。

…そろそろ来るころか…
まもなくクラウドに会って、一年が立とうとしている。

…あの時は、こんな事になるとは思わなかったな…
何気なく立ち寄ったグラウンドで、腕の中に倒れてきた少年…
その小さな身体が、いまや自分にとってかけがえのないものに、なってしまっている。

…愛してる…か…まさかこのオレが、その言葉を言う日がくるとはな…

セフィロスは自嘲する、今まで何度となく聞かされてきたその言葉、嘘っぽい言葉だと、聞かされる度に唇の端で笑っていた。

…それがこんなに真摯な気持ちから、滲みだす言葉だったとは…

その言葉を自分にくれた今までの者達に、少し申し訳なく思う、自分は確かに何も解っていなかった。

…愛してる…クラウド…お前がいなくなったら、オレはきっと狂ってしまう…

時計を見てふと眉間にしわをよせる、約束の時間を30分も過ぎていた。

…何かあったか?
思わず立ち上がりかけて、見なれた金色の頭が入り口から駆け込んでくるのに気が付いた。
ほっとして座り直す。

「ゴメン、遅くなった。」
クラウドは息を切らしている。

「べつにいいぞ、そんなにあせらなくても、ちゃんと予約してるから。」
セフィロスはクラウドに水を渡した。

クラウドはそれを受け取って一気に飲み干すと、息を整えながらじっとセフィロスの顔を見る。

「どうした?ん?」
やがてクラウドの大きな蒼い瞳に見る見る涙があふれだした。

「どうした!?おい?」
慌てるセフィロスに、クラウドは懸命に首を振る。
そして少ししゃくりあげながら、やっとの思いで言った…微笑みながら…

「セフィロス…ありがとう…」