セフィロス先生vv 21
クラウドが風呂から上がると、セフィロスが電話で怒鳴りあっていた。

「だからなんで、そうお前に怒られなきゃならないんだ!だから今クラウドはそれどころじゃないんだ!」

「…肝心な所を何も話してないって…まだそこまで話せないから…オレだって考えているんだぞ、あいつ母親なくしたばかりだし…」

「…おまえのように単純にできていたら、世の中苦労しないんだぞ!!…結婚式の日取りが決まった?…解った!!そう話をコロコロ変えるな!…はい、ちゃんとクラウドにそう言うよ…じゃあな。」

電話を切ってため息をつくセフィロスに、思いきって声をかける。

「今の電話エアリスさん?」
「ああ、思いっきり怒られた。おまえに何にも話してないと、エアリスから聞いたんだろ?」
セフィロスはリビングのソファーに座って、飲みかけのブランディを口にした。
クラウドも、その横にちょこんと座ってご相伴をねだる。

「少し…」
ぺろっと舌を出すクラウドに、ぶすっとしていたセフィロスの顔も、思わず緩んだ。

「こら、未成年!」
こつんと額を小突くが、あまりの可愛さに、つい笑顔が漏れる。
「少しちょうだい、それ口当たりいいんだもん。」
「しょうがない奴め…」
もう何度も飲ませているくせに、わざとクラウドにじゃれつかせるように、ねだらせた。

…可愛い…
風呂上がりのクラウドの髪の匂い…
…愛おしくてしょうがない…もう二度と手放したくない…

一口含んで口付ける、ブランディをゆっくり流し込みながらクラウドの舌を味わった。
熱い液体を流し込まれ、それよりもさらに熱く舌を絡められ、クラウドは息もできない、
やっとの思いで息をつけば、香り立つ高貴な芳香…それに誘われるように再度舌を絡めて、何度も求めあう。

ゆっくり顔を離すと、セフィロスはそのままクラウドを自分の胸に抱き込んだ。
「クラウド…愛してる…愛してる…」

背中を撫でるセフィロスの温かい掌…広く逞しい胸…この上もなく安心できる場所…
でも…ここはオレだけの場所じゃないんだ…

「エアリスさんから聞いたよ、家見つかったんだって?」
クラウドは、セフィロスの温もりを感じながら、呟くように言った。

「ああ、いい家らしい、少し手狭かもしれないが、庭もあるし、二人で住むのにはちょうどいいらしいぞ。」
セフィロスはク、ラウドの髪をゆっくりと漉いた。
クラウドは、その感触を確かめるように身体をすりよせる。

「そう?大学からも近いんだって?」
「ああ、歩いて行っても20分ぐらい、自転車なら10分かからないんじゃないか?治安も悪くないらしい。」
背中を撫でてくれるセフィロスの手、気持ちいい…ものすごく

…今の内に…覚えておかなくっちゃ…
クラウドは、自分の感情のゆれを知られまいと、必死だった。

そして…一番聞きたくない事を聞く。

「セフィロス…エアリスさん言ってたよ。ウェディングドレスのデザイン、決まったって。」
うっとりと酔ったように呟く、これを問うために酒の力が欲しかったのだ…
じゃなかったら、とても聞く勇気はない。
「ああ、日取りも決めたらしい、お前にも是非出席してもらうと言ってたぞ。」
思わず身体が強ばった。

…オレに出席しろと?オレに…

セフィロスがどんな表情をしているのか、、恐くてみる事ができない。
嬉しそうでも…困っていそうでも…どんなふうに返して良いのか解らない。
…オレはセフィロスにもらってばかりいるから…
だからやっとの思いで呟く。

「そんな無理だよ…」
それなのに、セフィロスの答えはそっけない。
「無理じゃないぞ、6月だからちゃんと行けるぞ。」
震える声で問う。
「セフィロスは…出席して欲しいの?」
「おまえが望むなら…」

ずるい…セフィロスはずるい…

背中をなでるセフィロスの手、頬をくすぐる長い銀色の髪…そのどれをも涙が出る程優しい。
…どうしてそんなに優しくするの?ちゃんと他に帰る所があるくせに…
「どうした?行きたくないなら、無理に行かなくてもいいんだぞ。」
「うん、考えとく。」
「もう少し飲むか?」
「うん、今度は自分で飲むよ。」
クラウドはグラスを受け取ると、グイと一気に残りを煽った。

「こら!」
あわててセフィロスが取り上げる。
「いいじゃない、明日休みだし。」
クスクス笑いながらじゃれつくクラウドを、膝の上に乗せる。
「口当たりはいいが、強いんだぞこの酒は。」
「知ってるよ、ねえセフィロスオレに何かして欲しい事ない?」
「して欲しい事?」
「うん、オレにして欲しい事…」

して欲しい事と言われ、思わず眼が泳いでしまう…煩悩の再燃…

…今して欲しい事と言えば…
泳いだ先には、クラウドがきちんとたたんだコスプレ用品一式。
いかんいかんと首を振って、腕の中のクラウドをみれば、すっかり酒が廻って、とろんとした目つきで見上げてくる。

「ねえ、せふぃろすぅ…」
心無しか舌足らずな喋り方、
こいつ、いつの間にこんな事を覚えやがった…
誘っているわけではなかろうが、思わず毒づく。
理性と煩悩の綱引きで、黙りこくってしまったセフィロスを、クラウドは不思議そうに見上げる。
そして、視線の先にあるものに気付くと、にこっと笑って立ち上がった。

「解った!あれ着ればいいんだね、あれ着てサービスして欲しいんでしょ♪」

へらへらっと笑うクラウドは、完全に酔っている。
危なっかしい足取りに、思わず手を差し出して抱きとめた。

「いいから、そんな事しなくって、大人しく座ってろ!」
クラウドはその手を強引に振払う。
「いいの!着るんだ!」
「この酔っ払い。」
腕の中でジタジタする少年に、セフィロスは、あーもうこいつはと、ため息をつく。
「酔っ払いでもいいもん、オレ、こんな事ぐらいでしかセフィロスに恩返しできないもん。」
「何!?」
セフィロスの声色が一瞬で変わった。

「だって、オレ身体でしか返せないもん。」
けたけたと笑うクラウドの両肩を、セフィロスは、思わず渾身の力で掴んでいた。

「イタ…痛いよセフィロス…」
クラウドは、何気なく非難を込めて見上げた。
そして顔が強ばる…視界には、今まで見たこともない、セフィロスの顔があった…
それは、クラウドが初めて見る冷たい瞳…留学中、周りの何ものをも凍り付かせると評された、絶対零度の翡翠の瞳。

「…おまえは…おまえは…」
絞りあげるように、セフィロスは声を出した。
その顔からは表情が消え、まさに白皙の美貌と言うにふさわしい。
恐怖を感じ、思わずクラウドはあとずさろうとするが、がっちりと肩を掴まれているので果たせない。

「…おまえは…そんなつもりでオレに抱かれていたのか?」
「セフィロ…」
「答えろクラウド!!」
慟哭という言葉を現したかの様な叫び、そして歪むセフィロスの顔…

こんなに恐いセフィロスは初めてだった、カタカタと無意識に身体が震えてくる。
恐怖に震え、返事もできないクラウドを、セフィロスはじっと見据えていたが、やがて崩れるように、クラウドの肩口に顔を埋めて呟いた。

「…答えてくれクラウド…何を言われても怒らないから…」
それは先ほどのセフィロスからは、想像も付かない様な、弱々しいつぶやき…

「セフィロス?」
やがてクラウドの肩に、振動が伝わってきた…
…セフィロスが…泣いてる…!?
しばらく時が流れるのが止まった気がした…

やがてクラウドは、おずおずとセフィロスの背中を撫でて囁く。
「セフィロス…ごめんなさい…」

知らなかった…セフィロスがこんなに、自分の事を思ってくれているなんて…

知らなかった…こんなに、熱い想いで包まれていたなんて…

知らなかった…………

……………………