A Stellar Sonata 3
 最期の客が帰り、ティファは店じまいをしていた、クラウドがニブルヘイムに行ってもう1週間になる、その間電話一本よこさない。


もともとマメに電話を入れる人じゃないけど……

そう思いながらもティファはため息をつく、寂しがっているのは自分だけだろうか、クラウドは今頃、あのロレンツォと楽しく仕事をしているのだろうか……

ばかね、ティファ何焼きもち焼いてるのよ、あの人はセフィロスゃないわ、ユフィの彼氏じゃない。

そう思いながらも不安が止まらない、婚約したと言うのにどうしてなのだろう……
いや、自分はその理由をよく解っている、だってクラウドは……



「はーい!もうお店終わったんだよね、ティファ、ユフィちゃんが慰めに来たよ。」
突然ユフィが入って来た、手にはワインの瓶を2、3本持って。

「ユフィ、あんた帰ったんじゃなかったの?」
「残念でした、オヤジの代理でウータイの輸出品を扱う店を出しに来てるんだよ、そう簡単に帰れないよ、ね、女同士で今夜は飲もう。」
「そうね。」
ティファはにっこり笑った。


「だからぁ、やっぱ男って解ってないんだよぉ、女の子ってちゃんと大人になってるってさぁ。」
もうすっかり夜が更けている、テーブルの上の酒瓶は1本2本と増えて行き、二人ともしたたかに酔っていた。

「最初さ、ロレンツォに会った時、あたし18だったんだよ、だからぁ、いつまでもあたしの事子供扱いするんだ、キスだっておでこにしかしてくんない。」
ぷーっとふくれるユフィ、ティファは少し儚い笑みを浮かべた。

「そうよね、そんな気持ち全然解ってくれないわよね、クラウドだってそう。」
「あたしぃ不思議だったんだけど、どうして一緒に住んでないの?てっきり住んでるもんだと思ってた。」
「そうよね、みんなそう思うよね…」

ティファの顔が不意に陰る、今まで胸の中に押し込め、誰にも言わなかった気持ちが、アルコールの力で徐々に染み出て来ていた。


「駄目なの、クラウドは泊まって行ってもくれない、それに知ってた?婚約は確かにしたけど、私クラウドとキス以上の関係じゃないのよ。」
「え!?…嘘でしょう!」

ユフィが驚いて聞き返す、ティファは自嘲気な笑みを浮かべていた


「本当よ、何度かそんな雰囲気になったけど、クラウドは……そんな時、すごくつらそうな顔をして『ごめん…』て、所詮私じゃ駄目なのかしらね。」
「そんな事ないって、クラウドもだらしないなぁ!ティファほど、クラウドを理解できている人いないんだから。」
「そうかしら、本当にそうかしら…私知っているのに、クラウドの心にずっと別の人が住んでるって…」
「ティファ…」


話しだしたティファは止まらなかった、ずっと誰かに聞いて欲しかった、聞いて欲しかったのだ、この5年間の悶々とした思いを…


「そんな、クラウドの心に誰が住んでるって言うの?…あ、ひょっとして…エアリス?」

ティファはゆっくりと首を振る。

「たぶん違うと思う、クラウドの心に今でも住んでいるのは…セフィロス…」


あまりの事に、ユフィの目が大きく見開かれた。
「はぁあ??なんで??ありえないよそんなの、どうして?未だに憎んでるとか……」
「信じられないでしょう?ふふふ……私もそうだった……セフィロスはね、神羅にいたころクラウドの恋人だったんだって。」
「えええ!!まさか…」
「あのあとクラウドが少しおかしくなってシドの所にいたでしょう?その時にクラウドが話したんだって、リーブに確認したら…有名だったって…クラウドは私が知っている事知らないわ。」
「婚約パーティに遅れたのだって、ロレンツォさんをセフィロスと間違えて探し回っていたせい……ユフィあんた気をつけないとロレンツォ取られるよ。」


ティファはクスクス笑う、その瞳は完全にアルコールに支配されていた、そして対称的にユフィの顔から段々アルコールが冷めていく。


「はは…まさか、だって二人とも男じゃん。」
「クラウドはね、元々年上の男の人に弱いの、そしてね、綺麗でしょうクラウド?そんな気がない人でも、つい一度くらいならって気になるらしい…」
「ちょっと、ティファ!何言ってんの!!」
ユフィがティファの肩を持ってガクガクと揺さぶる、ティファの目には涙が光っていた。

「…お店のお客さんがそう言ってたもの…だからユフィ…しっかり捕まえといて…」
呟きながら、すーすーとティファは眠ってしまっていた、ユフィの胸にどす黒い不安を残したままで。




 「へえ、地下室まであるんだな、しかしここは何に使っていたんだろう、まるでどこかの研究室のようだなクラウド。」
ホコリまみれの本棚を見ながら、ロレンツォが呟いた。


そう、ここは研究室だったんだ、オレとザックスが捕われていた場所、そして……セフィロスが狂った場所……


「どうしたクラウド、顔色が悪いぞ。」
「いや、なんでもないホコリの匂いが鼻について…」
「そうだな、確かに空気が悪い、ここはもう少し換気を考える必要がありそうだな。」

そう言ってロレンツォは、ひょいとクラウドの頭の上から一冊の本を取り出した。
「遺伝子生命学の専門書だな、ふむ……なかなかに興味深い……昔かじった事があってね。」

手もとの灯りをたよりに本を読み出すロレンツォ、思わず見とれるほど美しい彫りの深い横顔、その顔は本を読む事に没頭し、次第に真剣味を帯びて行く。
遠い記憶、徐々に表情がなくなる横顔、声をかけても返事はなく、振り向いた瞳は、すでに自分を映さずに……


「だめだ!だめだ!!」
いきなりクラウドが、ロレンツォの手から本を奪った。
「どうしたクラウド?」
「もうやめよう、ここから出よう。」
本を握る指先がわずかに震えている、そしてその顔は何かにおびえるかの様に、すっかりと蒼ざめていた。
「クラウド?」
「お願いだから、ねえ!」
蒼い瞳は必死に何かを訴えるかのように、ロレンツォを見つめている。
思わずクセのある金色の髪に手を伸ばし、優しくなでた。
「どうしたんだ、何も心配はいらない。」


アンバランスな青年だ…

柔らかい髪の感触を感じながらロレンツォは思う。

初めて会った時は、やたら無口でぶっきらぼうな青年だと思った。
ガードとしての腕は確かで、その細い身体のどこにそれだけの力が潜んでいるのか、呆れるほどにどんな強力なモンスターも蹴散らした。

それなのに、しばらくつきあうと、時折妙に幼い顔をするのが気になった。

折にふれ、自分にみせる懐かしいものを見る様な、切ない眼差し。
魔晄に輝く宝石の様な蒼い瞳で…

どうして自分をそんな目で見るのだろうか?
そしてその度に、胸の奥から沸き上がって来る物はなんなのだろうか?



「クラウド、何を心配している?何を脅えてるんだ?」

震えている肩に手を回され、柔らかく包む様に肩を寄せられた時、ようやくクラウドは目の前の人物がセフィロスでない事を思い出した。
この部屋で無言で本に集中する横顔を見た時、一番思い出したくない場面がフラッシュバックしたのだ。
静かに狂っていった、神羅の英雄。目の前の顔と同じ顔で、同じ声で、かつて確かに存在した愛しい男の姿が……


「ごめん、大丈夫だ、ちょっとどうかしていた。」
「ちょっとどころではないぞ、まだ顔色が悪い、本当にどうしたんだ?」
顔を背けるクラウドを、無理矢理ロレンツォが自分の方に向けた時、いきなり入り口のドアが開いた。

「ロレンツォ!あたし来ちゃったよ…」
言いかけて飛び込んで来たユフィがいきなり固まる、ユフィの目にはロレンツォがクラウドを抱き寄せようとしている様に見えたのだ。

「何してるんだよ!」
「何って…」

ロレンツォが戸惑ったような顔をした、その顔がますますユフィの疑念を確信へと深める。

「こんな人気のない所でなにやってるんだよ!離れろよ!」
二人の肩を乱暴に引き剥がしたユフィの必死な顔を見て、何を誤解されたのかを理解したクラウドは、無理に笑顔を作る。
「何を怒っているんだユフィ?オレがホコリにむせて気持ち悪くなったのを、心配してくれてただけなんだが。」

明るく笑うクラウドに、ユフィの顔が真っ赤に染まった、どうやらとんでもない誤解をしたらしい。
「いや、別にあたし怒ってないよ、それよりロレンツォ、お土産持って来たんだよ、ご飯一緒に食べよう。」
「じゃあクラウド今日はこれで終わりにするか、食事に行くぞ。」
「えー?久しぶりなのに、二人きりでご飯食べちゃだめなの?」
「何言ってるんだユフィ、別にクラウドも一緒でいいじゃないか。」
「だってぇ…」
ふて腐れるユフィ、にクラウドが横から口を挟んだ。

「オレはまだ腹が減ってないからあとで食べるよ、ロレンツォはユフィとゆっくり話して食事したらいい。」
そう言って出て行こうとするクラウドの肩を、ロレンツォがふいに掴んだ。
「クラウド、怒ったのか?」
「別に、ユフィだってあんたと話したいこと沢山あるだろうし、相手してやってくれよ、じゃあなユフィ。」

それだけ言うとクラウドはもう後ろを振り返りもせずに、地下室を後にした。





外に出ると日が暮れかけていた。

寒いな…

ふとそう思った、あのおぞましい実験台にされてから、クラウドの身体は暑さ寒さにそう影響を受けることはなくなった。
それなのに今、寒いと思ったのは何故だろう。

体感的に考えれば不思議ではない、ニブルヘイムの緯度はミッドガルよりずっと高く、この季節はコートなしでは外に出れないほどだ。外の気温は一桁だろうし、自分は薄いセーター1枚だ。


寒い…早く部屋に戻ってお湯割りの強い酒を…


いや、そんなもので暖まらないのは自分がよく解っている。
暖まるために必要な物は、広い逞しい胸と、すっぽりと自分を包み込む優しい腕、耳元であやす様に囁く甘いバリトン……
もう、とうに失われてしまって、二度と自分の手には戻らないもの……


自分の手で、ずたずたに、切り裂いてしまったもの……


クラウドは両手で自分を抱きしめ、軽くぶるっと震えると、宿舎に向かって足早に歩き出した。




 残されたロレンツォは軽くユフィをたしなめていた。
「さっきの言い方はあんまり失礼じゃないか、いくら友達でも怒るぞ。」
「だってぇ…心配だったんだもん。」
ユフィが少し拗ねた、甘えた様な声を出す。
「なんか二人ともすごくいい雰囲気でさ、ロレンツォがクラウドを口説いてるのかと思ったんだもん。」
「何をバカな…」
ロレンツォの目が優しく笑った、ユフィに甘えられるのは嫌ではない、むしろこんな風に拗ねた顔をされると、しょうがないと思いながらも、放っておけない気分にさせられる。

「だって、クラウド綺麗でしょ?それになんか雰囲気あるじゃん?クラウドって男の人にもモテルんだよ。」
「そうなのか?」

ロレンツォはクラウドの容姿を思い浮かべた。
陽の光を溶かした様な金色の髪、しみ一つない白い肌、形のいい顎、桃花を思わせる唇、そして宝玉の様に輝く蒼い魔晄の瞳…

たしかに魅力的な青年だと思う、あの容姿で、あの年の青年にしては細すぎる身体で、巨大な剣を振り回し、強力な魔法でモンスターを蹴散らす。
初めて会った時は、本当にこの華奢な青年がガードなどできるのかと疑ったが、実際モンスター相手に戦っているのを見た時は、驚きの声をあげた。
しかし、いつも哀しそうに、どこか遠くを見つめている気がするのは、何故なのだろうか?
時折自分を見つめる、切ない眼差しはなんなのだろうか?


「だめだよ、ロレンツォはセフィロスに似ているんだから、狙われてるよ。」
「はぁ?」
嫉妬のあまりユフィは、自分でも言うつもりのなかった事を言い出した。
「クラウドはね、昔神羅にいた頃、セフィロスに憧れて全然相手にしてもらえなかったから、セフィロスに似た男の人を口説くんだ。」
「まさか…」
「本当だよ、あたし友達の悪口言いたくないけど、ティファが嘆いてたもん…」

言いながら、ユフィの胸がずきりと痛む、自分は醜い、これだけの嘘を平気で並べ立てて…


『ロレンツォ取られるよ。』

だが、ティファの言ったこの一言が、ユフィの良心をすっかり凍らせていた。

「あの二人、どうして5年も付き合っているのに、未だに婚約だけなんだと思う?クラウドが色んな男の人にフラフラしてたからだよ、クラウドは年上のセフィロス似の男の人に弱いんだ。」
「そんなふうには見えなかったが…」
「ロレンツォ、クラウドに言われなかった?『オレの初恋の人に似ている』って、いつもそうやって口説くらしいんだ、気をつけてね。」
「そんな事はないと思うが…」

信じようとしないロレンツォに、ユフィはますます焦りの色を強くする。

「クラウドみたいに綺麗だったら、たとえ男でもそう言われたらグラリとくると思うんだ、あたし心配で…」
「バカな事を言うな、さあ、食事に行こうか。」
ぽんと頭にのせられた温かい掌に、ユフィは少しほっとした様な笑みを浮かべた。






 夜がすっかりふけていた、クラウドがぼんやりと窓の外を眺めていると、誰かがドアをノックした。

「クラウド、私だ。」
今思い出していた人と、寸分違わぬ声を直に聞いて、クラウドはどきりとしながらドアを開ける。

「何の用だ?ロレンツォ。」
「夕方のユフィの事を謝りに来た、それと、さっきうちの会社の奴が来て、アイシクルのいい酒を持って来てくれたんだ、一緒に飲まないか?」
手に提げている酒は、クラウドも見覚えのあるアイシクルエリアのきつい、それでいて美味い蒸留酒だ。
「あんたに謝られる筋合いはないけど、まあ入れよ。」

本当は今、こんな気分の時に、ロレンツォには会いたくなかった。
何故か今宵は、セフィロスの事ばかり思い出す、それなのに別人なのに、やたらセフィロスに似たこの男に会いたくなかった。

……いや、会いたかった……偽物でもいいからセフィロスに……


苦い思いを噛み締めながら、クラウドは椅子をすすめ、テーブルにグラスを二つ並べる。褐色の酒が注がれると、強く深いアルコールの芳香が辺りに漂った。

この酒はセフィロスが好きだった…


『これは強い酒だからな、あまり飲むなよ。』
『セフィロス、ニブルにはもっと強い酒だってあるんだよ、このくらい大丈夫だって。』


カチンとグラスを合わせる目の前の笑顔は、あの時と少しも変わらない、ただ、違う物は髪の色と、目の色と……

酒を酌み交わしながら、たわいもない会話をロレンツォと交わす、かつて毎日セフィロスとそうしていた様に。
二度と戻って来ない、懐かしい優しい日々……記憶の奥底にしまい込んだ、幸せなミッドガルでの毎日……

クラウドの意識は、次第にアルコールの霧の中に飲み込まれて行った。


「だめだよ、あんたどうして眼鏡なんてかけてるんだ?」
すっかり酔いつぶれたクラウドは、ベッドにおろされた時に目を覚ました。クスクスと笑いながら起き上がり、そっとロレンツォの眼鏡に手を伸ばす。

「何故って…私の目は光に少し弱いんだ、だから母がいつも掛けるようにって……おい、こら……。」
クラウドはさっとロレンツォの眼鏡を取って、いたずらっぽく笑った。
「やっぱりない方がずっといい男だよあんた、でも、ないとやっぱ似てる……」
ロレンツォの片眉が軽く上がる。

「誰に?」
「セフィロス……オレが初めて好きになった人……」
クラウドはロレンツォの頬を両手で挟む、通った鼻筋、形のいい唇……ああどれをとっても似ている……似ている?似ているだけなのか?

「セフィロスは優しかった、いつもオレを温かく包んでくれた……」
じっと見つめるクラウドの魔晄の瞳は、哀しみに溢れていた、縁取られた金色の睫毛に水晶の様に涙が光り、やがて頬を伝わって行く。

「ねえ…セフィロスなんだろう?本当はセフィロスなんだろう?」
愛しげにロレンツォの胸に、クラウドは頬をすり寄せた。
「教えてよ、オレにだけは教えてよ……本当の事を……」
「クラウド。」

ロレンツォは優しく笑うと、クラウドの顎を持ち上げ、唇を重ねた。
一瞬目を見開いたクラウドは、差し込まれる舌に夢中になって吸い付く、最初はゆっくり、しだいに激しくなるくちづけ。
優しく上顎なぞり、歯茎をたどり、舌と舌を軽く突きあわせながら、強く絡ませあっていく。
強く吸い上げられ、クラウドは歓喜に震えた。


セフィロスのキスだ……

ああ……セフィロスのキスだ……


涙が止めどもなく溢れて行く、二度と与えられる事はないと思っていたセフィロスのキス、それが今、再び自分に与えられている、昔と寸分変わらず、甘く、激しく。

切ない吐息を漏らしながらゆっくり唇を外し、クラウドは濡れた瞳で微笑んだ。
「やっぱりセフィロスだったんだね。」


しかし、いきなり、冷たく吐き捨てる様な声が響いた。
「これで満足したか?全く罪作りな奴だな。」
クラウドは、はっと身体を固くして、男の蔑んだヘイゼルの瞳を見つめた、魔晄の瞳でないヘイゼルの瞳を。

「確かにお前の様な奇麗な顔で、うっとりと囁かればその気がなくてもそういう気分になる、涙も台詞も実に効果的だ、だが、見損なったぞ。」

一瞬でアルコールが覚めると同時に、クラウドはぐっと唇を噛み締めた。
同じ顔、同じ声、同じキス……だが、この男はセフィロスではない、セフィロスならこんな事言うわけない。


「火遊びはいい加減にしておけ、婚約者を悲しませるな……」
言いかけたロレンツォの頬に、高い音が響いた。
「クラウド……」
頬を押さえたロレンツォの目に映ったのは、暗く怒りに燃える蒼い魔晄の瞳。


「拳で殴られなかった事を感謝しろ!解ったよ!おまえはセフィロスじゃない、セフィロスであるわけない。」
「クラウド、私は……」
「出て行け!出て行ってくれ!!」

もう一度きつく睨み付けられ、ロレンツォは無言で部屋を出て行った。



クラウドはしばらくベッドに腰掛けていた、握りしめる自分の手の甲に温かい物が落ちる。
それが涙だと自覚した時に、嗚咽が漏れだし、やがて泣き声に変わった。

セフィロス!
セフィロス!
セフィロス!!

どうして側にいてくれないんだ?
どうしてオレを置いて行った?
どうしてオレを、あの場所に留めておいてくれなかった!?

もう一度呼んでよ、オレの名前を
もう一度呼んでよ…
抱きしめて!キスして!セフィロス!

セフィロス!!


押し殺した泣き声は、部屋の外にまで聞こえていた、胸をかきむしられる程の悲痛な響き。
ドアの外では、ロレンッオが、じっとその声を聞いていた。

何かを間違えたかもしれないと、思いながら。



         back              top              next