| Encounter …邂逅… 4 | ||||||||||
| 朝の光が差し込みかけていた。 腕の中の温もりがもたらす奇妙な充足感のせいか、セフィロスもとろとろと浅い眠りに包まれかけた時、 フィに奇妙な気配が辺りに満ちた。 一瞬で眠りから覚め、気配を探る、 …それは微かな…非常に微かな音… …シュルー…シュルー… そして空気に僅かに混じる生臭い独特の匂い… …ミッドガルズオルムか… 全長50メートル以上にもなる巨大な蛇のモンスターミッドガルズオルム、通常はその巨大な身体を隠すため、ミスリルマイン近くの湿地帯から出る事はないはずだ。 …今年は雨が長かったからな…そのせいか… 最近まで続いた長雨でこの辺りでは、あちこちに思わぬ水源ができたり、小さな湖沼帯ができたりしている。 あの巨大な蛇が、沼伝いに行動範囲を広げても不思議ではない。 …さて、どうするか… セフィロスは腕の中で優しい寝息を立てる少年の顔を見つめる。 穏やかな、穏やかな寝顔…胸の中にぽっと明かりが灯る様な… ミッドガルズオルムなどセフィロスの敵ではない、正宗があれば一刀両断ですむ相手だ。 しかし、今ここに正宗はない…とすれば魔法で一気にかたを付けたいが… あの巨体を一気に片付ける魔法を使えば、周囲におよぼす影響は小さくないだろう… …この少年の眠りを妨げたくない… セフィロスはポケットから『リボン』を取り出すと、クラウドの左腕に結び付けた、そしてバリアのマテリアを手に短く呪文を詠唱すると『ウォール』の魔法がクラウドの全身を保護する。 …ここにはあまり強力なモンスターはいない、しばらくはこれで大丈夫だろう… 念のため予備のバングルをクラウドの右腕にはめてやる。 着ていたレザーのライダージャケットを脱ぎ、優しくクラウドに掛けてやると、 セフィロスはミッドガルズオルムを引き付けるために、より気配が強くなる方向に駆け出していった。 エンジンの音で目が覚めた… 身体にかかっているのは、あの男が着ていたライダージャケット… …あの人は? 思う間もなく近付いてくるオンボロなトラックに気が付いた。 …あいつらだ! きっとこのたき火に気づいたに違いない! 自転車に飛び乗ろうとした時に車の中から稲光りが走った! 目の前で光がスパークし、自転車がふっ飛ぶ!一瞬何が起こったかわからなかった。 「逃げるなよガキ!今度はおまえにお見舞いするぞ!!」 トラックの荷台から男が叫ぶ! クラウドを見張っていた男だった。 構わず走りだそうとしたクラウドを見て、別の男が持っていた剣をかざして呪文を詠唱する。 再度走る稲光り!瞬間クラウドは目を瞑った… しかし予想していた衝撃はこず、代わりにトラックの方から悲鳴が走った。 「ぎゃーー!!」 トラックへの落雷! ぶすぶすと黒い煙りをあげて方向を失うトラック!! 狙われたクラウドも何がなんだか解らない、しかしこの間に逃げなくては!! 夢中でクラウドは走り出す、自分の腕にはまったバングルのマテリアが、怪しい光を放って自分の全身を覆っているのにも気付かずに…小さく茂った森の中へと、姿を隠すために駆け出していった。 トラックの中からやっとの思いではい出した男達は、口々に剣を持った男を罵った。 「おまえ、何やってるんだ?自分たちにサンダー落としてどうする気だ!?」 「違う、オレは確かにあのガキを狙ったんだ!それに気絶させるつもりだっからそんなに出力あげてないぜ!!」 「じゃあ、なんで、トラックに食らってぶっ壊れるんだよ!!」 「お前が間違ったんじゃねーのか?もと神羅のソルジャーが笑わせるぜ!」 「そーそ、元サードだったかなんだか知らねーが、今じゃ売春宿の用心棒だからな、腕がなまってるんじゃねーのか?」 どっと起こった笑い声に、男はぎろっとにらみを効かせた。 「そーか?なまってるかどうかお前ら相手してみるか?」 凍り付く様なソルジャー独特の殺気に、他の男達は慌てだす。 「おい、よそうぜ、仲間割れしたっていい事なんかねえぞ!それよりさっさとあのガキを捕まえようぜ。」 確かに、ここで無駄な立ち回りをしてもしょうがないと思ったのか、元ソルジャーの男は渋々殺気を引っ込めた。 「おい、見ろよこのバイク、ディトナの最新型だぜ。」 野営の跡でバイクをみつけ、一人が妙にはしゃいだ声をあげた。 「なんでこんな所にあるんだ?」 脱ぎ捨てられたライダージャケットを見て、元ソルジャーが不審気な声をあげる。 ちょっと見ただけでも解る上質な代物、そしてまだ一般にはそう出回っていない最新のバイク、 それも普通の体力では転がせない代物だ。 「知るか!きっとどこかの金持ちのボンボンが、あのガキ拾ったものの、オレたちに気付いて逃げ出したんじゃないか?もらっちまおうぜ!」 キーの接続コードを切ろうとして、男の一人がバイクのエンジンカバーに手をかけようとした。 「ばか!やめろ!!」 元ソルジャーが声を掛けたときにはすでに遅かった… 「ギャギグァーーーー!」 この世の者とも思えない異様叫び声と、肉の焦げる独特の臭気… 流れ出した高圧の電流にも似た魔晄は、不埒な盗賊の命を一瞬で奪い去った。 ばったりと異様な形で倒れた仲間の死体を見て、男達は思わず後ずさる。 「泥棒よけだ、ディトナには所有者以外が不用意に起動できないように、こういう仕掛けがしてある。」 元ソルジャーは事も無げに呟いた。 ぼそぼそと囁きあう仲間をしり目に、そのまま呟きを続ける。 「しかし、あくまで気絶させるレベルしか流れないはずだ…ここまでの高出力、最新モデル…特別仕様の持ち主… 軍関係?…まさかソルジャーファースト!?」 ファーストと聞いて、周りの男達が慌てだす。 無理もない、一人で千人にも匹敵すると言われている神羅の誇る人間兵器ソルジャーファースト… 「おい!本当か!?まずいんじゃないか?」 「…そうだとしたらさっきの魔法も説明がつく、あのガキに魔法カウンターのマテリアが装備されていたとしたら… 放たれた魔法は倍の威力で、術者に跳ね返ってくる。そして魔法カウンターのマテリアを持っているのはファーストソルジャーぐらいだ。」 辺りが一瞬で静まり返った。 男達は顔を見あわせていたが、やがて中の一人が弱々しく尋ねた。 「おい待てよ!本当にそんな奴いるのか?」 「そうだ、本当にいるのならとうに姿を見せるはずだぞ。」 イヤな事は誰も考えたくないものだ、一人が言い出すと、みな口々にそんなはずはないと言いだした。 「それによ、オレたちは別にソルジャーに張り合おうってんじゃねえんだ!あのガキを捕まえればいいんだからな!!」 「そうだ!そうだ!!とっととあのガキを捕まえて帰ろうぜ!」 「そうと決まれば早くあのガキ捕まえるぞ!みんなついてこい!!」 元ソルジャーはため息をついたが、もとより自分もファーストソルジャーとやり合う気はない。 世間一般の人間よりも、はるかにその恐ろしさは知っている。 「解った、だがこいつの死体はどうする?」 「あとで回収するさ…モンスターに食われてなきゃな…」 「…だな…」 男達は森の中に消えて行った。 …思ったより手間どったな… セフィロスは飛ぶ様な早さで走っていた。 遭遇したミッドガルズオルムは標準よりも巨大で、素早かった。 それに見あう魔法を落とすには、野営した所からできるだけ離れておきたかったのだが… …日が昇ってしまったな… あの少年は目を覚ましただろうか?目を覚ましていたら自分がいない事をどう思っただろうか? …それよりも、無事でいるだろうか?モンスターに襲われていないだろうか? 自分でも過剰とも思える装備をさせたくせに、セフィロスの不安は収まらない… どうして?なぜ?オレはこんなに気になるんだ? 自分でも訳の解らない衝動、とにかく早く無事を確かめたい。 しかし、そんなセフィロスの想いを逆なでるように、元の場所に近くなるにつれ異様な雰囲気を感じ取る。 思わず走る足が速度を増した。 数匹のモンスターが、何かにたかっている… …まさか!! 軽いブリザドでモンスターを蹴散らす。 跡に残っているのは、半分食われかけた黒焦げの死体だった。 …この大きさは、あの子ではないな… 思わずほっと息をついて、そんな自分に驚く。 どうして会ったばかりの、名前も知らない少年の無事を自分は喜んでいるのか? そんな想いを振り切る様に辺りを調べる。 …ディトナのトラップに引っ掛かったか… このモデルは、いずれ軍用に転換されることが決まっているため、必要以上にガードされている。 …まあ盗もうとした奴が悪いんだろうが… 脱ぎ捨てられた自分のジャケットを拾い、その周囲に複数の足跡と魔法で壊れたトラックを見つけ、セフィロスは大体の状況が把握できた。 足跡は一様に森に向かっている。 「…まだ、名前も聞かせてもらってないからな…」 どうして会ったばかりの少年のためにここまでするのか? 自分自身の疑問に答える様に呟いて、セフィロスは森の中に走っていった。 |
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