Innovation…変革 3





「改めて紹介する、クラウド=ストライフだ、9月から士官学校の生徒になる。」
「よろしく御願します。」
ぺこりと頭を下げるクラウドに、ジャックが目を細める、この男は子供好きなのだ。
「おう、こちらこそ。オレはジャック=デヴィッド=トレーバー、ジャックでいいぞ。」
快活な笑顔、握手する手も肉厚でたのもしい。

「私はロイド=リンクス=トレーバー、君が今年度のトップ入学のクラウド君ですか。」
端正な唇から、思いもよらぬ事を言われ、クラウドはびっくりする。
「え?えーとそんな事は…」
「おや、セフィロスから聞いていないんですか?今年の入学者のトップは君ですよ。」
「ロイド、オレはまだ何にも話していない、入学前からいらない先入観を持つのは良くない事だ。」
「別にいいじゃないですか、入学式の時の総代でどうせすぐ解る事でしょうに、それともギリギリまで内緒にしてほしかったですか?」
意味ありげにニヤリと笑われ、セフィロスは不機嫌に黙り込んだ。
「あ、あのオレ、ほんと何にも知らなくて…」
「気にしないでいいですよ、セフィロスは君を独占できなくなって拗ねているだけですから。」

くすくすと笑うロイドを見て、ザックスが小声でジャックに囁く。
「こえー、あんな不機嫌なにーさん相手にあそこまで言えるのは主任ぐらいだぜ、親父よくあんなのとつきあってるな。」
「そうか?あれでロイドもなかなか可愛いんだぞ。」
「そのセリフ、親父だから言えるんだって思いますけどね、隊長と張り合えるのって、親父と主任くらいだし。」
首をすくめるレオとザックス、しかし、なかなか見ものではある、こんなにあからさまに感情を見せるセフィロスを、初めて見た気がする。

…おもしれー!にーさんをここまで変えた奴がこんなガキね、どこがそんなに気に入ったんだ?
…まあ、主任のお手並み拝見といきますか…

そんな周りの思惑等まったく解らず、クラウドは、いきなり増えた人数と会話について行けなくて呆然としていた。

…この人達みんなソルジャーなんだよな…
あまりに自分が持っていたイメージと違う、もっときっちり襟を詰めて生活しているような、エリート集団だと思っていた。
「あ、あのオレ、食事作ってきます、シチューくらいしかできませんが。」

とにかくこの場から逃げたくて、取り繕う様に言ってみたが…
「ああ、そういえばハラ減ったな、実はうまい魚食わせてやろうと思って、ちゃんと用意してきたんだ、セフィロス、台所借りるぞ。」
「ああ、勝手にしろ。」
ジャックは持ち込んできた保冷ボックスを片手に台所へと向かう。

「あ、あのオレします。」
慌てるクラウドにジャックはニヤリと笑う。
「いいカツオが手に入ったんだ、ウータイ風のシーフードサラダ作ってやるよ。」
「でも、お客さまに…」
「好きにさせてやってください、クラウド君、ジャックは料理するのが好きなんですから、うちでもいつもやってもらってるんですよ。」
「うちでも?」

クラウドは、ふとさっきから疑問に思っている事を聞いてみた。
「あの、お二人は御兄弟ですか?」
「私とジャックがですか?くすっ…似てますか?」
「いえ、でもファミリーネームも一緒だし。」
くすくすと笑い続けるロイド。
「でしょうね、私とジャックは結婚してるんですよ。」
「ええーーー!!」

びっくりして大声を上げるクラウドに、ザックスが笑いながら囁く。
「な、あんなの嫁にもらうのって、親父くらいだって。」
「誰が『嫁』ですか!?」
「だって、どう考えたって親父が『嫁』って感じじゃないしさ。」
「どうして、ストレートの男はそういうふうにしかとらえれないんでしょうね、結婚してるからといって、男女の枠組みに入れなきゃいけないってこともないでしょうに。」
「そうだぞ、ザックス、現に家事労働はオレのほうが断然うまい。」
陽気に笑うジャックと艶麗に微笑むロイド、二人をかわるがわる見て、クラウドはまだぱくぱくと口を動かしている。

「そのくらいにしとけ、びっくりして固まっているじゃないか。」
セフィロスがクラウドの頭に手をのせ、髪をくしゃくしゃとかき回した。
「風習の違いだ、ミッドガルでは同性でも結婚できる、きちんと法律にのっとてな。」
「え?え?えー!?」

ますますパニクるクラウド。
都会って都会って…どうなってるんだ!?

「すまん、すまん、驚かせたな坊主。」
ばんばんと背中を叩かれても、まだ呆然としている。
「でもほんと可愛いですね、顔もそうだけど、性格もすれてなくて素直だし、うーん、肌もすべすべ。」
ロイドに抱き寄せられ、ほっぺたをすりすりされても微動だにしないクラウドを、すかさずセフィロスが奪い返した。

「いい加減にしろよ、こいつに手をだすな。」
地の底から響く様な低い声に、ロイドはにやりと笑う。
「おや?やきもちですか?心が狭いですよ英雄。」
セフィロスはじろりと睨んだ。

「おまえが真性のゲイじゃなければ、オレも心配はしないさ。」
「すると、バイのあなたは危なくないというわけですか?」
バチバチとぶつかる視線、なぜか突然険悪になった二人におろおろするクラウド。

えーと…ゲイにバイ?それがなんで危ないんだよ…?

助け舟を出したのはレオだった。
「二人ともいい加減にしませんか、クラウド君の前でする会話ですか?」

こういう時に、常識人の言うセリフは重い、とたんにバツが悪そうに黙り込んだ二人にクラウドは不思議そうな顔をする。
視線が合ったザックスはにやっと笑った。
「まあ、ガキのお前にはちょっと早すぎる話だって事だ。」
「オレガキじゃない!もう13だ!」
「立派なガキじゃねーか、くっくっくっく…」

向かってくるクラウドをなんなくかわすザックス、ますますムキになるクラウド、犬がじゃれるような喧嘩にセフィロスの顔がふと緩む。
それまで見たこともないような、温かい春の日ざしの様なまなざしを送るセフィロスに、ロイドはからかう様に囁いた。
「珍しく気に入っているようですね、セフィロス、いよいよ本命ですか?」
「見ていて飽きない、それだけだ、ジャックを手伝ってくるか。」
とたんに表情を戻し、台所へ消えるセフィロスをロイドはくすくすと笑う。

「主任、あまりからかわないほうがいいですよ、隊長、結構マジなんじゃないですか?」
「年寄りのおせっかいですよ、あれで本人自覚ないみたいですから、結構ウブなんですよあの坊やは。」
そう言われて、レオは思わず肩をすくめた。

天下の英雄を『坊や』扱いするあなたがオレはとってもこわいんですが…

ザックスと違い、『口は災いのもと』と言うことわざを、しっかり理解している彼は、もちろんその言葉を飲み込んだ。



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