セフィロス先生vv 8
「…だから、この推論が甘い、もう少し突き詰めて見ろ。」
「…セフィロス一度聞きたかったんだけど、この難しい定理何?」
「一昨年統計学の学会でオレが発表した逆説論理の中の一つだが」
「それって、大学で習うんじゃ…オレ中学生なんだけど…」

セフィロスはコツンとクラウドのおでこを叩く
「でも理解できたろ?そして展開もまずくない。」
満足げに微笑むセフィロスがまぶしい。
クラウドは少し赤くなりながら、キーボードを叩く。

「話かえるけど、オレに1日1万も払って、あんたやってけるんだよな、これってそんなに稼げるのか?」
セフィロスは後ろから手を回すと、そのままクラウドを柔らかく抱き締める。
「いくらと思うか?」
いたずらっぽくクスクス笑う。

吐息が耳から首筋を柔らかくなで、甘いコロンの匂いに包まれる。
胸が高鳴り、身体の芯がカーっと熱くなる、それでいて不思議と落ち着けて…
心地よい瞬間、安心できる空間…
でも…
振り切るようにクラウドは答えた。
「解んないよそんなの、ちょっと離してよ、しずらいよ。」
セフィロスは、クスクス笑いを止めずに首筋に唇を滑らす。
ピクンと跳ねるクラウドの身体を更に抱き締め、耳もとで囁いた。

「このまえお前が『この計算難しいけど面白い』て言っていたのがあったろ?」
その甘い声と唇の感触の心地よさに、思わず声が震えそうになり、懸命に堪える。

「ああ、『ヴァリアンス分析とチームのエビデンスに基づく営業効率と今後の課題』?」
「よく覚えてるな、あれで1万。」
クラウドは少し拍子抜けした。
「え?そんなもの?」
「US$でだが。」
「つーことは100万円!?」
びっくりするクラウドを更にぎゅっと抱き締め、
クスクス笑いながら、首筋にじゃれつくようにキスを繰り返すセフィロス。

…からかったな?
少しむっとするが、あまりの心地よさに大人しくされるがままになる。
…なんかオレ…グルーミングされてる猫みたいだ…
だけど本当に心地よくって…

…RRRRR…
柔らかい空間を切り裂くように電話が鳴った。
とたんにクラウドの身体が強ばる。

「どうかしたか?」
「ううん、びっくりしただけ。」
この間から電話が鳴る度にクラウドの様子がおかしい。
疑問に思いながらもセフィロスは電話に出た。

…ふーっ…
クラウドはため息をついてチラと電話中のセフィロスを見る。
…だめだ、過敏になってる…
気になってしょうがない、セフィロスはあのあとあの人に電話したんだろうか?
同じ家にいても、四六時中一緒にいるわけではない。
クラウドだって母親の様子を見に病院に行くし、セフィロスも時々出かける。
自分がいない間に電話してるのか?
日本に来ると言っていたあの人はいつ来るのか?
オレが考えてもしょうがない事なのに…
…嫉妬してる…オレ…あの人に…

「…はい、それで解りました…ちょっと博士!!かわらなくていいです!!」
突然大声を出したセフィロスにクラウドはびっくりして振り返った。
セフィロスがバツのわるそうな顔をしている。
「…だから…解ったよ、悪かった…ああすぐに電話しなかったのはオレが悪かった…」

セフィロスがこんな話し方をするなんて誰だろう?
…もしかして…あの人?…
すーっと背筋が凍るのを感じる。

「…来なくていい!!オレも忙しいし、第一今独りで住んでるわけじゃない…」
聞くつもりはなくても自然耳に入ってくる。そして顔が青ざめてくるのが解った。
「…違うそんなんじゃない、遊んでるわけじゃないぞ、博士から聞いたろ?優秀な生徒を預かってると…」

…優秀な生徒…
セフィロスの言葉が胸に刺さる。

「…だから別にそんな関係じゃないって…わー泣くな! というか泣きまねするな…解ってるぞおまえの手口は…」
明らかに困っていながらどこか楽しそうに話すセフィロス。

「ああ、だからどちらにしろオレもそっちに帰らなきゃならんし、 その時にゆっくり話すから…」
帰る?セフィロスが…

「解った解った…来週1週間程そっちに帰るから…ティファニーの新作リング?解った、そのとき買ってやるから…じゃな。」
電話を切ったセフィロスから慌てて眼をそらした。

…セフィロスが帰る…帰る?そうだよなこの家はセフィロスが帰る所じゃないんだ…
胸が苦しい…息ができない…
それでもゆっくり深呼吸して、何でもないように装ってセフィロスに聞いてみた。

「帰るの?」
「ああ、ちょっと電話やメールじゃ駄目な用件があってな、一週間程帰ってくる。」
…帰るんだね…あの人の所に…
「ふーん大変だね。」

…オレの声は震えてないだろうか?ちゃんと話せてるだろうか?
そんなクラウドの葛藤を知ってか知らずか、セフィロスはきっぱり言い切った。
「オレの留守中もちゃんとこの家にいろよ!毎日居るか夜の10時に電話するからな。」
きょとんとしたクラウドに、セフィロスは更に続ける。

「食事は3食届けてもらうようにもう手配してある。」
「オレ子供じゃないぞ!食事ぐらいどうにかするよ!それにちょっと横暴。」
「毎日パンだけで過ごすつもりだろ?どーせ。」
はいはいそーですよ、あんたみたいにスバラシイ料理つくれませんよ。
少しふて腐れたクラウドを背中から優しく包みながらセフィロスは囁いた。
「頼むから…いうとおりにしてくれクラウド、じゃないとオレは安心して帰れない。」

…優しくしないでよ…これ以上優しくしないでよ…
泣きそうになる自分を無理やり押さえ込み、絞り出すようにクラウドは答えた。
「解ったよ。」
「じゃ、さっきの続きをするぞ、これを持って帰らなきゃならんからな。」
クラウドの頬にキスを一つ落とすと、セフィロスは書類のチェックを始めた。

黙り込んで黙々と書類に向かうクラウドは、少し怒っているようだ。
…しょうがないだろ、お前をこの家から出したくないんだから…
お前を手放したくない…そのためには…どうするのが一番なのか…オレは迷ってばかりだクラウド…

クラウドには、セフィロスの気持ちは解らない。
セフィロスにも、クラウドの気持ちが解らない。
切ない空気が広がる中、パソコンのキーを打つ音だけが響いていった。

…オレこんなに朝弱かったっけ?
ぼんやりとした頭で時計を見て、ため息をつく。
時計は10時をまわっていた。
前は4時半には起きてたよな…セフィロスと暮らす前までは…

いや、セフィロスと暮らしだしても、こんなに遅くまでは寝ていなかった。
7時ぐらいに起きると、いい匂いがキッチンからしてくる。
朝食の準備中のセフィロスは、クラウドに気が付くと、 すばやくおはようのキスvv
…もう!あんた手早すぎ!
怒るクラウドを見てにやりと笑う
…今日はお前のお好きなベーコン入りのチーズオムレツだぞ…

当たり前のようだった日常…
でも今セフィロスはいない…
だから…起きたくない…セフィロスがいない事を感じたくない…

…まだ3日めなのに…オレ…こんなに弱かったっけか?
のそっと起き上がって、パジャマのまま朝食を取りにいく。
セフィロスが頼んでくれた食事は、いつも玄関のドアの外にワゴンに乗せておいてある。
一流の店の料理だと思う、今日で3日めだが朝食だけでも
同じものが続かないし、味もいい。
…でも…
おいしくない…セフィロスが作ってくれたものの方がおいしい…
セフィロスが一緒に食べないとおいしくない…
セフィロスが側にいないから…おいしくない…
どうどう巡りになる思考…

…オレわがままだ、セフィロスは今頃あの人と、御飯食べてるんだろうか?
あの人に作ってあげてるんだろうか?
そしてあの人におはようのキスをして、あの人を抱いて寝る…

どす黒い感情が湧いてくる…
涙がじわっとにじんでくる…

オレ…どうしたんだ? どうしてこんなに悲しいんだ?
関係ないじゃないか、セフィロスにだって恋人の一人ぐらいはいる、
あたりまえの事なのに…

半分も食べずに食事を終え、食器を下げるとクラウドは又ベッドに横になった。

…気持ちいい…
…ここはセフィロスの匂いがする… セフィロスに包まれてる感じがする…