セフィロス先生vv 5

…ったく、らしくないな…
腕の中の存在を愛しく思う。

…愛しい?オレにもまだそんな感情があったのか?

腕の中の少年は疲れ果てて深い眠りに落ちている。
ガンとしてソファーに寝ると言い張るので、寝付いた所を自分のベッドに連れ込んだ。

「…ん…」
少年が少し身じろぎする。

さらさらとこぼれる少し癖のある金色の髪、それと同じ色の長いまつげが、
月の光の中、少し蒼みを帯びた肌の上で切な気に震えている。

…愛しい…

セフィロスはクラウドの家の事情を知っていた。
最初はちょっとした興味、午後はおろか午前中でも眠そうにしている。
ただの夜更かしじゃない事は最初の出会いで解っていた。
そして昼食はいつもパンを2個、牛乳1つ。
この年頃の少年にしては少なすぎる。
抱き上げたときの身体の軽さも、直に触れて感じた華奢さも、
満足に食べてないせいだと思った。

では何故この恵まれた国で?
そう思って調べてみたらあっさり解ったのだ、この年頃の少年にしては重すぎる枷を。

そしてクラウドが夜のバイトをしてると知ったとき、つい心配で様子を見に行った。
少年は自分が周りにどんな目で見られているのか、全然気が付いていなかった。
整った容姿に目立つ金色の髪、そして見るものを引き込ませる蒼天の瞳…
あの3人にしても機会を伺っていたのを知っている。
ただ、やめろと言っても決して素直に聞かない事が解っていたので、
いつもセフィロスは、クラウドのバイト先が見下ろせるあのバーで、 バイトが終わるまで待っていた。
そして家に帰るまでを見届ける。
あの時セフィロスは偶然居合わせたわけではなかったのだ。

「…ん、ふ…」
クラウドが又みじろぐ。
少し開いた珊瑚色の唇から覗く舌に誘われて、セフィロスはゆっくり自分のそれを重ねた。
柔らかい感触を堪能しながら舌を絡める。
そのまま思うさまに貪りたいのをなけなしの理性で堪え、唇を放す。
…我ながら迂遠なことをしているな…
柔らかい金色の髪を腕の中に抱き込みながら、ぼんやりとそう思った。

…ん…今何時だっけ…?
久しぶりにぐっすり眠った気がする。
ぼんやりとした頭でそう思った次の瞬間、クラウドは飛び起きた。

「しまった!新聞配達遅れる!!」
「大丈夫だ今日は休刊日だ。」
あ、そうだった…
安心して再び眠ろうとして、ふと気が付く。
…今の声、誰だ?
それに自分の背中に誰かの腕がまわっている気がする。
更にいうならば、自分も誰かを…それも裸の誰かの背に腕をまわしてる気がする…
恐る恐る目を開けると、いたずらっぽい翡翠の瞳が自分を優しく見下ろしていた。

「目が覚めたか?ゆうべは楽しかったな。」
…ゆうべ、ゆうべって…
目をぱちくりさせるクラウドの額にセフィロスは優しくキスを落とす。
「初めてのくせにずいぶん大胆だったな。」
にやっと笑うセフィロスを見て、自分がセフィロスを、しかも裸のセフィロスを抱き締めている事にクラウドは初めて気が付いた。
「わーーーー!!」
あわてて、セフィロスを突き飛ばす。
しかし、強い力でぎゅっと抱き締められた。
「冷たいやつだな…ゆうべはあんなに可愛くオレにすがったくせに。」

ぴったり頬に当たるのは逞しいセフィロスの裸の胸…
…こいつこんなに筋肉ついてるんだ…って違う!!
セフィロスは、裸だ…じゃ自分は…
ひとまずパジャマを着ているのにほっとする、がしかし…
さっきから太ももを彷徨っているセフィロスの手を直に感じる。
…と、いうことは…
たらりと汗を流してブランケットをめくると、形のいい自分の素足を撫で回すセフィロスの手があった。
…オレ、ズボンはいてない…
「わーーーー!!変態!チカン!!オレに何したんだーーー!!」
「何をいまさらvvゆうべあれだけ可愛い声で啼いたくせに。」
「知らない、知らない!覚えてない!」
セフィロスは青くなったり赤くなったりするクラウドの顎をゆっくり捉えた。
「では、思い出してもらうために、続きをしようかvv」
うなじに唇を這わし、右手をパジャマの裾からすべりこませ、セフィロスが壮絶に色っぽい声で囁く。
ゾクりとした感触を感じながら、クラウドは叫ぶ。
「わーー!!オレホントに何にも覚えてないんですーー!!」
もう半分泣きが入っていた。
…どーしよ、どーしよオレ男とやっちゃったんだ…しかも自分の担任と…
突然セフィロスが弾けたように笑い出した。

「ばーか、ちゃんとパンツははいてるだろう?」
そう言われてハッとする。
…はいてる、ちゃんと…よかった。

冷静になって思い出してみれば、ゆうべセフィロスの論文とやらの口述筆記をさせられ、
そのまま泊まったのだった。
しかもパジャマを貸してもらったが、大きすぎてズボンはずるずるで、仕方無しに上だけ着て寝たのだった。
…待てよ、オレソファーで寝なかったけ?
まだ笑いが止まらないセフィロスに向かってくラウドがむっとした声で聞いた。
「なんでオレここで寝てるんですか、それにどうして先生は裸なんですか。」
ぶーたれた様子のクラウドに笑いの止まらないセフィロスは、くしゃくしゃと金色の髪をかき回した。
「おまえの寝相があまりにすばらしいので、安全のために連れてきた。パジャマはお前が上をきてるから、下だけ履いて寝ただけだが。」
気が付けば、セフィロスもちゃんとズボンは履いている。
…からかったな!!
むくれる様子がなんとも可愛い

「ゆうべはそのまま寝たからな、朝飯の前にシャワー浴びてこい。」
「先生は?」
「オレはもう済ませた。」
…じゃあ、いつまでも上半身裸でいるなよ!
ぶつぶつ思いながらもクラウドは浴室に向かう。

落ち着いた色調の、シャワールームが別についた浴室。
もちろんバスタブは、クラウドはおろかセフィロスが、ゆったり手足を伸ばしても、あまりある大きさだ、しかもジャグジー付き。

すげーな、ここひょっとして億ション?
自分の家のお風呂と比べて、クラウドは素直に感動した。
…が、パジャマを脱いで、自分の身体を鏡に映した時

「わーーーーー!!」
クラウドの悲鳴が浴室からエコーを伴って響いてくる。
…気付いたか?まあ少しはつまませてもらわないとvv
セフィロスはにんまりと笑う。

「二度とあんな奴信用するもんかーー!」
自分の首から胸にかけて無数についている紅点に絶叫するクラウドだった。

「…卵はオムレツか?目玉焼きか?」
「…オムレツ…」
「チーズ入れても大丈夫か?コーンとシメジどっち入れる?」
「コーンでいいよ、それにオレチーズは好き。」
「スープはミネストローネとポタージュどっちにする?」
「ポタージュ…」
…ここはレストランか?
さっきからセフィロスは楽しそうに朝食を作っている。
それもいちいちクラウドにメニューを聞きながら…
考えたら今日は日曜日、いつものクラウドだったら少し朝寝坊して、一人でパンをかじってる頃だ。
オープンキッチンからいい匂いがしてきて、思わずお腹がぐーと鳴る。
ここから見ていても、セフィロスの手際はいい。
オムレツを器用にひっくり返すと、何かを炒めだす、と思うとサラダの準備をしだす。
…なんでオレここでこいつにメシ作ってもらってるんだ?
昨日からどうも、セフィロスペースで話を進められてる気がする。
結局、バイトを全部やめる事を約束させられたし,
気が付けば母が退院するまで、ここに一緒に住む事も約束させられた。

「なんでオレがあんたと住まなくっちゃならないんだよ!!」
噛み付くクラウドにセフィロスはあっさり答える。
「お前が危なっかしいから」
「ここに住む方がよっぽどアブナイじゃないか!このセクハラ教師!!理由もないのに一緒に住めるか!!」
「理由が欲しいか?なら…」
風呂上がり、まだパジャマの上着だけ着たクラウドをあっさり組み敷く。
わたわたとあせるクラウドの顎を捉え、にっこり凶悪な笑顔で囁く。
「今から既成事実を作ればいいわけだな。」
掌がパジャマの中に滑っていく、楽しそうにセフィロスは耳タブを軽く噛んだ。
「やん…」
ぞくっときた感触に思わず声をあげ、その声の甘さに自分でびっくりして真っ赤になった。
「わー!!やめろーー!」
「やめろ?口の聞き方を知らない奴だな、それが解るまでやめてやらん。」
イヂワルーく、どこか楽し気なセフィロスの口調、
指先が胸の紅点を捉え、軽くはさんで揺すられる。
むず痒いような痺れる様な妙な感覚に、又声が漏れそうになる。
耳の中に舌を差し込まれるネチャッという音…
クラウドは慌てて叫んだ。

「やめて下さい!!お願いします!もうやめて!!」
もう、意地もプライドもない、このままあっさり既成事実とやらを作られるわけにはいかない。
「じゃあ一緒に住むな。」
「住みます、住みます。」
必死に哀願するクラウドの身体を、セフィロスは笑いながら離す。
「メシが済んだら荷物とってこい。惜しかったな、もう少し意地を張ってくれたら楽しめたのに。」
…じょーだんじゃない!!だいたいこいつどこまで本気なんだ!!

「…できたぞ、どうかしたか?」
…さっきのあんたのセクハラを思い出していたんだよ!
ぶすーとした顔でテーブルをみてクラウドは目を丸くした。

「誰が食べるんだ、これ?」
「オレとおまえ。」
テーブルの上にぎっしり並んだ朝食。
さっき言ってたチーズオムレツや、ポタージュスープはともかく、シーザーサラダにボイルドソーセージ、スライスされた各種チーズに、カリカリベーコン、シャケのマリネに茄子とひき肉のスパゲティ、果物各種ときたもんだ。
しかも量がハンパじゃない。
「これ二人分?」
「足りないか?」
厚切りのフランスパンにバターをたっぷり塗ってセフィロスはクラウドに渡す。
「多すぎるって!…このパン焼き立て?」
「このマンション隣がパン屋でな、さっき買ってきた。うまいぞ。」
匂いに釣られてぱくっと食べる。
「おいしい!」
とたんにご機嫌になったクラウドを見てセフィロスは、くすくす笑いながらコーヒーをついだ。
「おまえ細すぎだ、しっかり食っとけ!今のままじゃ抱き心地が悪い。」
そのセリフにぐっとつまってあわててコーヒーを流し込む。
「…そんなもん良くなくていいんだよ!」
「オレにとっては重要な問題だが?」
意味シンににやっと笑うセフィロスに真っ赤になってクラウドは叫んだ。
「このセクハラ教師!」
「…おまえ限定の…な♪」

…勝てない…こいつには絶対に勝てない…
耳まで赤くなったクラウドは、もしゃもしゃとオムレツを食べだした。