セフィロス先生vv 26
不思議そうな顔をするクラウドに、セフィロスはにっこり笑顔で答えた。
「ハーバード大学特別聴講生合格おめでとう。」
「はぁ?」
クラウドには寝耳に水の言葉だった。
飲み込みかけた料理が喉に詰まりかける、慌てて水を飲んで叫んでいた。

「何!?それ!!」
「しー、食事中だぞ、部屋で詳しく話す。」

高級レストランで食事をしているのを思い出して、クラウドは首をすくめた。
楽し気に食事を続けるセフィロス。

…あんた何べんオレをびっくりさせたら気が済むんだ…
クラウドは、ほとんど味のしなくなった料理を飲み込んだ。


セフィロスからとんでもない事を聞いて、クラウドの頭はパニック状態だった。
…はーばーど?ハーバードだよな…あの…よく聞くハーバード…

部屋に戻ってセフィロスが、ルームサービスでワインを頼む。
「ここでなら、お前に飲ませてもさしつかえないだろう。」
クラウドにもワインをついで、カチンとグラスを鳴らす。

「改めて、おめでとうクラウド。」
ようやくクラウドは口を開く事ができた。
「ちょっと待てよセフィロス、いつの間にそういう事になったんだ?」
セフィロスはにっと笑う。

「おまえの一年間の研究論文、TOEFL、SATの成績、それと面接と筆記試験の結果だ。」
「セフィロス、TOEFL、SATはともかく、オレ研究論文なんか知らないよ、それに面接と筆記試験なんか受けた事ない。」
「論文は途中からおまえ一人にさせてたろ?テーマと仮説だけ与えて。」
「あれって、仕事って言わなかった?」
「仕事だ、オレも最初はまさかお前がここまでできる様になるとは、思ってなかったが。」
セフィロスはゆっくりグラスを煽った。

「最初はそういううつもりではなかったが、お前の飲み込みの早さにひょっとしたらと思って、途中から指導方針を変えてみたんだ。」
「でも、オレ入試と面接なんか…」
「夏に受けたろ?ガスト博士に。」

クラウドは眼をぱちくりさせた。
「え?あれってそうだったん?」
「あたりまえだ、じゃなかったら何のためにスーツで行かせたと思っていたんだ?」
「てっきりオレ、セフィロスの大事な人に会わせたかったからと…」
セフィロスはクラウドの髪をクシャリと撫でた。

「何のためにオレがわざわざあの時期に、向こうに戻ったと思ってるんだ?」
ちょっとイタズラに光る翡翠の瞳。
「まさか…オレのため!?」
「そう、おまえの特別入学の話を、まとめに行ったんだ。」

「ええ!?」
あまりの展開にクラウドはついていけない。

…と言う事は…

「セフィロス…あの頃からこんな事企んでいたの!?」
「あの頃から帰国するなら、ぜったいお前をつれて帰ると決めていた…」
セフィロスは、まだ呆然としているクラウドの肩を引き寄せた。

「…たとえどんな障害があっても…」
そうしてクラウドの髪に口付ける。
「セフィロス…」
「だが、おまえの母親もまだ健在だったし、万人に納得させる方法はこれが一番だと思った。」
セフィロスはゆっくりクラウドの顔を覗き込んだ、蒼天の瞳が輝いているはずだった…しかし…

「…オレの…オレの気持ちはどうなるんだよ…」
クラウドが、哀しい色を宿してセフィロスを見つめる。

「クラウド?…そりゃあおまえに相談もなく決めたのは悪かったと思うが…」
セフィロスは慌てた、当然喜んでくれると思ったのに…

「セフィロスはオレをなんだと思ってるの?セフィロスのいいなりになる人形?オレにだって心があるんだよ…」
じょじょに語尾が震えてくる、泣くのを堪えているクラウド、セフィロスにはわけが解らない。

「クラウド、お前に内緒にしたのがそんなに気に食わなかったか?でもオレはオレなりに…」
抱き締めようとした手をクラウドは振払う。
「第一オレ、アメリカに行ってどこに住むの?」
「オレの家だ、なんのために家を探して、エアリスにおまえの部屋を用意させたと思ってるんだ?」
クラウドが黙り込んだ、そしてじっとセフィロスを見つめる。

「まさかあの家で一緒にすむつもり?」
あきらかに怒りを含んだクラウドの声、今度はセフィロスが眼をぱちくりする番だった。

「それがいけないのか?」
「いいわけないだろ!セフィロスのバカ!!」
叫ぶと同時に、おもいっきりセフィロスは殴られていた。
あぜんとするセフィロスをおいて、クラウドは外に飛び出していた。


…バカ…セフィロスのバカ…
どこをどう走ったか解らない、気が付けば知らない路地裏だった。

…オレだってセフィロスとずっと一緒にいたいよ…でもそんな事できるわけないじゃないか…
結婚するセフィロスとエアリスと暮らす?そんな事できるわけないじゃないか!
第一エアリスもエアリスだ、オレとセフィロスの事知っててどういう神経してるんだ!
いや、一番悪いのはセフィロスだ、新婚家庭に普通愛人一緒に囲うとか思うか?


…それともそれが大人の考え方なのか?…
…オレがガキだからいけないのか?…

色々考えると段々情けなくなってきた。
その辺にあるカンを蹴飛ばす。

「セフィロスのバカ!」
「スケベ!」
「自分勝手!」
「セクハラ教師!」
蹴りながら散々セフィロスを罵る、そしてつぶやく…

「でも…好きだよ…大好きだ…大好きだよ…セフィロス…」
そのまま、ええっ…ひっく…ええん…うっく…とクラウドは声を上げて泣いていた。

…それなのにどうしてこんなに好きなんだろう…どうしてセフィロスじゃないとダメなんだろう…