セフィロス先生vv 13
あっというまも無く部屋の外に連れ出された。

「わーい、デート、デート。」
…この人って天然に無邪気なのか?
なんか訳の解らんペースに巻き込まれてしまっているクラウドだった。
ホテルの売店を連れまわされて、その後は喫茶ルームに引っ張っていかれた。
お喋りはまったく途切れる事無く…

…ホント退屈しないや、ワルイ人じゃなさそうだけど…この人セフィロスの何?

「私チョコパフェ、あ、モンブランサンデーにしようかな?クラウドは?」
「食事前だから、あまり食べない方がいいですよ。」
「やだークラウドったら、セフィロスみたいな事いうのね。」
コロコロと笑うエアリス。
「女の子はね、甘いものは入る所が違うんだから、何にする?さっきセフィロスからお小遣いせしめちゃったから、私のおごりよ。」
「え、そんなわけには…」
いくらなんでも、女の子におごってもらうわけにはいかない。
「ウ−ソ、ホントはセフィロスが、クラウドとお茶するならって、さっきくれたの。だから遠慮しないで。」
「じゃ、コーヒーをブレンドで。」

ひらひらと手を振って、ウェィタ−に注文するエアリスを見て、クラウドはまたもや息苦しさを感じる。
…セフィロスってこんな子が好きなのかな?

襟元に指を入れたクラウドを見てエアリスは言った。
「クラウド、苦しいならネクタイ外しちゃいなさいよ。」
「いえ、大丈夫です。」
「外していいってば。」
エアリスが、ひょいと手を延ばして、クラウドのネクタイを緩め、ボタンを外しかけてぷっと笑う。

「あの?」
怪訝そうな顔をするクラウドに、そのままネクタイを治して、エアリスは、耳もとで囁いた。
「ゴメンなさい、外すわけにはいかなかったのね、セフィロスって、ホント手が早いんだから。」
その言葉を一瞬飲み込み、反すうし、気付いて全身真っ赤になった。

このホテルに来る前、セフィロスに押し倒され、キスをされ,そのとき散々首筋を吸われた記憶がある…
きっと首筋には、セフィロスが散らした跡が、散乱してるのだろう。
真っ赤になって、首筋を押さえたクラウドを見て、エアリスは笑った。

「大丈夫よ、パパには内緒にしといてあげる。」
「あの…」
「セフィロスって手が早いんだから、やっぱあんなに顔も頭もいいと、来るもの拒まずってとこかしら?私はもうなれたけど。」

…手が早い?もう慣れた?
クラウドの頭の中で、エアリスの言った言葉が、ぐるぐる回りだす。

「私の友達なんて、実態を知らないからうらやましがるのよ、『いいわねエアリス、あんな人が婚約者なんて』って!」

「婚約者!?」
びっくりして、思わずクラウドは叫んでいた、周囲の視線が自然と集まる。
「パパが勝手に、決めてるだけだってば。」
エアリスの言葉が遠くで聞こえた。

「セフィロスはパパのお気に入りだから…やっぱ子供のときから預かってるから、情が湧くんでしょうね。」
エアリスの言葉が、頭の中を素通りする。

「でもセフィロスって、めったにいない美形だし、頭いいし、スポーツ万能だし、そういわれてワルイ気はしないのよ。」

…婚約者…この人がセフィロスの?

「あちこち連れまわすと、羨ましがられるのよ、これであの性格の悪さがなければね。クラウドもそう思うでしょ?」

…セフィロスの婚約者…

「ね、クラウド、クラウドってば…。」
「あ、はい…」
「どうかした?」
「いえ、べつに…」
「あ、ごめーん、決してセフィロスを、悪く言っているんじゃないのよ。セフィロスって性格悪くて、冷たいけど、懐に入れた人には信じられないくらい優しいのよね。」

…それは貴女に対しても…?

ウエィターが、コーヒーと、パフェとサンデーを運んできた。
「きゃーおいしそvvv」
ぱくつくエアリスは、ほんと無邪気だ…

セフィロスは、こんな風に明るくて、無邪気な子が好きなんだろう…
エアリスを見るセフィロスの眼は、困り果ててはいるものの、とても優しい。
…でもセフィロス…オレは特別って言ったよね?愛してるって言ったよね?
あの時のセフィロスが、嘘をついていたとは思えないのだけれど…

「クラウドどうしたの?コーヒーさめちゃうよ。」
エアリスは黙り込んだクラウドに、怪訝そうに問いかけた。
「あ、はい。」
あわてて啜るコーヒーは苦い…
「大丈夫よ、セフィロスなら、昨日もパパが、散々アメリカに戻ってこいと言ったけど、『クラウドが、卒業してから戻ります。』って言ってたから、すぐには戻らないって。」

瞬間、目の前が暗くなった…
セフィロスがアメリカに戻る?
オレが卒業するのを見届けて?

それはなるだけ、クラウドが考えないようにしていた事だった。
セフィロスは、最初っから一年契約の臨時職員なのだ。
それがすぎれば、戻ってしまうのは当たり前の事…
…でも、耐えられない…セフィロスがいなくなってしまうなんて…
二度と会えないなんて…

「ね、クラウド、心配しなくて大丈夫って…あ、この曲…」
BGMが変わった…それはクラウドにとって、今では心の奥の宝石のようなもの、セフィロスがあのとき歌ってくれた『Ju te veux』…

…黄金の天使、甘やかな果実、
 瞳の魅力、
 許しておくれ、おまえがほしい…
クラウドの眼を真摯に見つめて、歌ってくれたセフィロス…

『この詩を知って、まるでお前に対するオレの気持ちだと思った…』
思い出すだけで胸が熱くなる…

「この曲の詩知ってる?」
「あ、はい…」
歌ってくれた状況を思い出し、思わず赤くなる…

「『私にはあなたの想いが解ったわ、
  愛しい人、
  あなたの情熱に負けたわ、
  どうか私を恋人にしてね…』好きなのよね私この詩」
「え?オレの知ってるのと違います。」
とまどうクラウドに、エアリスはコロコロ笑って答えた。
「あ、この詩はね、女声版と、男声版とあってね、私が今言ったのは女声版、クラウドが知っているのはきっと男声版でしょ?」
クスクスとエアリスは笑う。

「『黄金の天使、甘やかな果実、
 瞳の魅力、
 許しておくれ、おまえがほしい…』
ねえクラウド、この詩でセフィロスに口説かれなかった?」
クラウドは思わずエアリスを凝視した…蒼天のような瞳が切な気に震えた。

「この詩ね、私がセフィロスに教えたのよ、クラウドを口説くときちょうどいいよって、絶対一発で参るからって。」

ピキン…
クラウドは自分の心臓にヒビが入る音を確かに聞いた…

「どうした?疲れたか?」
車の中で、、終止無言のクラウドにセフィロスは怪訝そうにたずねた。
「ううん…別に…」
ぼそりと答えるクラウド…あきらかに覇気がない。

…エアリスの奴…何かよけいな事言ったな! あのおしゃべり娘め!
心の中で悪態をつく。

「エアリスが何か言ったか?」
ビクンと震えるクラウドに、やっぱりとため息をつく。
「あいつが何を言ったか知らんが、今はお前だけを愛してる。」
…今は?じゃあその前は?そしてこの後は?

以前だったら、嬉しくてしょうがなかったセフィロスの言葉が、上滑りして聞こえる。
レストランでの3人の会話、とても楽しそうで、自分なんて入るすき間もなくって…
エアリスを見つめるセフィロスの瞳が、熱っぽく感じられて…

きっとどんな人を相手にしても、セフィロスは、エアリスの所に帰っていくのだろう。
クラウドは哀しかった。
エアリスの特別と、自分の特別…
きっとエアリスの特別の方、が上なんだ…

セフィロスのマンションに着いて、着替えかけたクラウドは、思いきって聞いてみた。
「セフィロス…アメリカに帰るの?」
「ん…そのことか…」

…あいつ、クラウドを、不安がらせる事を言いやがって…
クラウドの髪を、くしゃくしゃとかき混ぜながら、セフィロスは答える。
「まだ当分は帰らん、おまえがこっちにいるからな。」
「でもいつかは帰るんでしょう?」
不安げにセフィロスを見上げるクラウド、蒼い宝玉のような瞳が切な気に揺れる…
思わず抱き締めていた。

「おまえを、おいては行かない絶対に。」
「本当?本当?セフィロス?」
「本当だ…」
そのまま口付ける、最初は軽く…次第に深く…
シャツをめくり上げ、滑らかな肌に手を滑らせ、自分の餓えに舌打ちする。
…限界だな…

「…クラウド…今夜は帰さん…覚悟しておけ…」
耳もとで低く囁かれクラウドは赤くなって頷いた。