セフィロス先生vv
連れていかれたのはホテルのレストランだった。
そこで食事をすませてラウンジへ、

「教授、お元気でしたか?」
「セフィロス、ひさしぶりだ。」
現れたのは品のいい人のよさそうな初老の紳士だった。
セフィロスと同じ、品のいいキングスイングリッシュ。

握手をする二人を見てクラウドは少し居心地の悪さを感じていた。
…この人がさっきの電話の相手?オレに会わせたい人ってこの人?

「教授、お話したクラウドです。クラウド=ストライフ。 クラウド、こちらはオレの恩師でハーバード大学の遺伝子工学部の主任教授、ガスト=ファミレス博士。」
「よろしくクラウド君、君の話はセフィロスからよく聞いてるよ。」
にこにこと笑って手を差し伸べる博士と、クラウドはおっかなびっくり握手を交わした。

「ここではなんだから部屋に行こうか?」
促されてガスト博士の部屋に行く。
途中こそっと、セフィロスに聞いた。

「ねえ、いったいなんなの?」
「ガスト博士から依頼された仕事があってな、おまえに頼もうと思って。」
「じょーだんだろ?そんな偉い人の仕事を、おれなんかができるのかよ!」
「大丈夫だ、おまえならできる。いつものようにすればいいだけだ。」

…いったいセフィロス何考えてるんだ?自分でやればいいじゃないか!
でもそんなすごい人と知り合いなんて、ホントセフィロスってすごいんだ…
色々考えているうちに部屋についた。

こういう部屋はスゥイートというんだろうな、まん中にリビングがあって両端に部屋が一つずつある。
ぼけーっとそんな事を考えていると、ガスト博士が声をかけた。
「さあ、座りたまえ。」
イスを勧められ大人しく座る。
「では教授、よろしく御願します。」
セフィロスが部屋を出て行こうとするのであわてて叫んだ。

「セフィロス!?」
「クラウド、時間になったら迎えにくるからな、心配するな。」
とびっきり優しい笑顔で、ドアの向こうに消えたセフィロスに、クラウドは悪態をつきたくなった。
…バカヤロー…一人にするなよ!

博士はニコニコ笑ってクラウドにコーヒーを勧めた。
「セフィロスにあんな顔をさせるなんて、君はよほど気に入られているんですね。」
「いえ,別に…」
無意識に顔が赤くなる。
…セフィロスのバカヤロー!

「ではクラウド君、早速これをやってもらいましょうか、ノートパソコンはこれを使って下さい。」
渡された書類とパソコンとファイル。

…数学の証明問題?
それとテーマのある論文
…いったいなんなんだ?
疑問に思いながらも取り組むクラウドを、ガスト博士はニコニコ笑って見ていた。

「…よろしい、お疲れ様でした。」
「え、これでいいんですか?」
「はい、お疲れ様でした。時間もちょうどいい頃ですね。」
時計を見ると6時を回っていた、5時間くらいこの部屋にいた事になる。
没頭し過ぎて、そんなに時間がたったとは思わなかったが…

「そろそろセフィロスが、迎えにくる頃でしょう。」
博士が言い終わらないうちに、ドアがノックされた。
「教授、セフィロスです。」
「ほらね、心配性なんだからあの子は。」

…あの子?
「教授はセフィロスと、どういう知り合いなんですか?」
ただの恩師とは思えない愛情を、言葉の端々に感じて、クラウドは聞いてみた。
ドアを開けにいこうとしていた博士は、振り向いて答える。

「あの子が10歳で留学して来た時、私の家で面倒みたんですよ。私の息子のようなものです。」
…そうか、だからセフィロスは、あんな顔をして、会わせたかったのか…

博士がドアを開けるとセフィロスが入ってきた、いやもう一人…

「パパ、鍵を部屋においたまま、外に出ちゃっていた。」
笑いながら一緒に入ってきたのは、カールのかかった茶色の髪と、エメラルドグリーンの瞳の、クラウドより少し年上の奇麗な少女だった。
そしてその手はしっかりと、セフィロスの腕を掴んでいる。
…あの電話の女性だ

クラウドは直感的にそう思った。
「ちょうどセフィロスにあったのよ、ピアス買ってもらっちゃった。」
「それは災難でしたね、セフィロス。」

セフィロスはなんとも言えない顔をしている。
「連れてきているなら、言ってくださいよ教授…」
「すみませんね、この子が君をびっくりさせるんだと言ったもので。」

その少女はクラウドを見つけると、飛びつくように握手した。
「あなたがクラウドね、いつもセフィロスから聞いてるわ、私エアリス。エアリス=ゲインズブール=ファミレス、よろしくね。」
クラウドは、少女の手を握っている自分の手が、指先から冷たくなるのを感じていた。

「わーほんと聞いてたとおり、可愛い!」
年上とはいえ、初対面の相手にそう言われ、思わずむっとした。

それを見とがめたセフィロスが、ちょっときつい口調で言う。
「エアリス、男に向かって可愛いは失礼だろう?」
「あら?じゃあセフィロスが言う分はいいの?きっと何回も言ったんでしょう?『可愛い』って」
「あのな…」

困り果てるセフィロスというのを、クラウドははじめてみた。
それにしてもこの少女は、クルクルとよく喋る。
「言ってないとは言わせないわよ、だって笑っちゃう程、セフィロスの好みじゃない?クラウド君って。」
その一言がクラウドの胸に突き刺さる。
「セフィロスって昔から、綺麗で繊細なもの好きだもんね、ヒビが入ると自分で壊しちゃうけど。」

…それはどういう意味だ?

怪訝そうな顔をするクラウドに、何の邪気もない笑顔を向けて、エアリスは答える。
「セフィロスって、ガラス細工とか好きなくせに、ちょっとでもヒビが入ると、粉々に砕いて捨てちゃうのよね。」

…それはオレも一緒って事?
段々顔つきが暗くなるクラウドを見て、セフィロスが話を遮った。
「いいかげんにしないかエアリス、クラウドがびっくりして、何も言えなくなってるじゃないか。」
「あら、ゴメンなさい、私おしゃべりなのよねー。」

やれ、やれとため息をつくセフィロス、でもその顔は少し楽しそうで…
ちりちりと胸を焦がす様な不快感、少し息苦しささえ感じる。
「すみませんねクラウド君、エアリスのおしゃべりには、私も困ってるんですよ。」
ニコニコとそう言うガスト博士に、本当の事が言えるわけがない。
「いえ、オレ、ネクタイとかしなれてないもんで、ちょっと疲れただけです。」

「そうですか?もう楽にしていいですよ。7時にレストランを予約してあります、君もつきあってくれますね。」
本音はイヤだったが、そう言えるわけが無い。
「はい、ありがとうございます。」
「じゃあ、エアリス、私は今からセフィロスと話がありますから、それまでクラウド君の相手を頼みましたよ。」

…え?
思わずセフィロスの顔を見上げる。
「クラウド、すまんが7時まで、ちょっと時間をつぶしててくれ。」
「うふ、任せといてセフィロス、クラウド君退屈させないから。」
無邪気に笑って、さっさとクラウドと腕を組むエアリスを、セフィロスは恐い顔で睨んだ。

「エアリス、よけいな事を言うなよ。」
「こわーい!!早く逃げよクラウド君、あ、もうクラウドでいいよね、私の事もエアリスって呼んでね。」
とまどうクラウドをしり目に、エアリスはその腕を掴むと、ずるずると部屋の外に引っ張っていった。