非時香果
…ときじくのかのみ…
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タンタンとキーを叩く軽い音が聞こえる、ここはソルジャー連隊の司令室、クラウドは始業時間前だというのに、資料をみながら熱心に報告書を作成していた。

「新年おめでとうクラウド。」
いきなり後ろから、こつんと肩を小突かれた。
振り向くとレオがいつもの穏やかな笑顔で、つんつんとクラウドを突いている。
「あ、おめでとうございます少佐、早いですね。」
「まだ就業前だ、敬語はいいよ、正月返上で大変だったみたいだな、これはお土産。」
「そう?わ、ありがとう、ミディールに行って来たの?」

渡された袋の文字を見て、クラウドの目が輝く、まだ行った事もない南の島だ。
今日は新年の初出勤の日、本来なら学生のクラウドはまだ休みなのだが、セフィロス付きの従卒という自分の役目上、休む気にはならなかった。
それに、昨年末に起こったテロ騒ぎで、年末から正月にかけて、ソルジャー達は大忙しだった。
休暇中の者を外して、シフトを組んだから余計に。

「悪かったな、隊長、出ずっぱりだったって?」
「うん、どうしてもシフト組めなくて、でもザックスの方が可愛そうだったよ、本当は休暇を取るはずだったのに、直前でキャンセルされちゃって。」
「まあ、しょうがないか、今回主任と副長も早くから休み取ってたしな、司令部が隊長だけってわけにもいくまいし…で、なんでおまえがザックスの報告書作成してるんだ?」
画面を覗き込まれてクラウドは慌てた。

「レオ、内緒にしといて、ザックスの報告書が間に合いそうもないんで、頼まれたんだ。」
「あいつめ…隊長に知れたら怒られるだけじゃすまないぞ…ああ、だから家じゃなくてここでしているわけか。」
「うん、セフィロスにはどうしても会社で調べ物があるって言って、早めにでてきたんだ。」

隊長には恐らくばれてるぞクラウド…
レオはへたな嘘をついて家を出るクラウドを、内心むかつきながら、そ知らぬ顔で見送るセフィロスを思い浮かべて苦笑した。

「で、ザックスは何してるんだ?」
「新年を一緒に迎えるはずだった彼女のご機嫌取り、これ、今日提出なんだって、でも彼女の誕生日が昨日で、これをすっぽかすと絶対ふられるからって、昨日頼まれたんだよ。」
「あきれたやつだな、これ1週間前のやつじゃないか、もっと早くに仕上げればいいだろうに。」
「毎日忙しかったからね、しょうがないよ。」
「やれやれ、貸してみろ手伝ってやるから。」
「わー、ありがとうレオ、実を言うと、間に合う自信なかったんだ。」

オレもたいがいザックスに甘いな、正確に言うとクラウドとザックスにか…
嬉しそうなクラウドの笑顔に、レオは微笑みながら心の中でため息をついていた。

「わりー!クラウドできたか!!」
就業10分前、ザックスがばたばたと駆け込んでくる。
「ザックス!バカ…」
クラウドが言いかけた時にはもう遅かった、司令部のドアを全開にしたザックスが見た者は、自分に突き刺さる8つの魔洸の瞳。

「…あ、と…みなさんもうお揃いで…」
「そりゃあ誰かさんと違って、休み明けですから早めに出てきますよ、年末お疲れ様でした…と、そう言おうと思ってたんですがね。」
ロイドから一際冷たい視線を浴びせられ、ザックスは縮み上がった。

「クラウドぉ…ばれたのかよ。」
こそこそと、耳打ちする様にクラウド聞くと、クラウドもちらっと横目でザックスを見て囁く。
「ザックス来るのが遅すぎるんだよ、せっかくレオが手伝ってくれたのに、先にロイドが出てくるから、提出した書類、ザックスが作成したんじゃないっってばれちゃった。」
「えー?兄貴も手伝ってくれたんだ、わりーわりー。」
「クラウドが一人で可愛そうだったんでな、でもおまえ、人にこんな事頼むなら、せめて今日は1時間前に来いよ、オレだって、休み中の事が気になってそのくらいにでてきたってのに。」
「いやぁ、彼女が話してくれなくってさぁ、やっとご機嫌治ったのに、また悪くしたくないじゃん…」
言い終わるより早く、ジャックのげんこつが脳天を直撃した。

「このお調子もんが!自分の始末は自分でつけろ、後輩に悪い見本を見せるな!全くたまに誉めてやろうと思えば…」
「わー!親父、かんべん、かんべん。」
両手を頭の上で合わせて拝む様な真似をするザックスに、クラウドがぷっと吹き出す。

「あの、勘弁してやって、受けたオレも悪いんだから…」
その言葉に、今まで黙っていたセフィロスが、渋い顔で口を開いた。

「そうだぞクラウド、おまえはこいつを甘やかしすぎだ、これからは少しは考えて返事しろ。」
「ごめんセフィロス。」
しゅんとなったクラウドにセフィロスは慌てて、ザックスを睨んだ。

「いや、悪いのはおまえじゃない、このバカだ。」
「へ?にーさんもクラウドにはたいがい、甘いんじゃ…」
「うるさい!だいたいお前がきちんと報告書を提出しないから、こういう事になるんだ、今月休みなし!」
「わー!!そりゃちょっと殺生でしょ?年末年始、ずっーっと出ずっぱりだったんだぜ、オレ。」
「それはオレも、クラウドも一緒だ!甘えるな。」
「そうだぞ、おまえ一人が忙しかったわけじゃない。」
「学生のクラウドだってちゃんとやってるのに、あなたは。」

複数の氷の視線で再度睨まれ、ザックスは途方に暮れて、助けてくれそうな人にちらちらと視線を送る。
この場合それは当然、レオになる。
レオは視線を感じて、苦笑して間に入った。

「まあ、まあ隊長、みんなもその辺で許してやってください、休み中頑張ったのはホントだし、せっかく彼女とのニューイヤー旅行を、直前でキャンセルまでしてくれたんですから。」
クラウドもちらっとセフィロスを見ながら、必死でフォローする。
「ザックス一杯、がんばったんだよ、だからオレ、手伝おうと思ったんだ、悪い事だって思ったけど…ザックスが休みなしなら、オレも同じだよ、ね。」

その一生懸命な様子を見て、ジャックとロイドの顔が緩むが、セフィロスは相変わらず渋い顔…なんの事はない、クラウドが自分以外の奴の事で一生懸命になるのが面白くないのだ。
それにピンと気がついて、ロイドがセフィロスを見て意味ありげににやりと笑う。
セフィロスは内心舌打ちしながら、クラウドをなだめた。

「解った、今回はおまえに免じておおめに見よう、次はないぞザックス。」
「わー!助かった、やっぱにーさんクラウドにはとことん甘いわ、助かった!!」

レオが、このバカ…と呟くより早く、セフィロスが投げた分厚いファイルが、ザックスのおでこにクリーンヒットした。

「ただし、今日中にこの書類をやりなおせ、いいな!じゃ、そろそろ仕事を始めるか。」
「そうですね、ああ、クラウドそのバカはほっておいて、あとで美味しいお茶をいれて下さいね、いい葉っぱをお土産に買ってきましたから。」


クラウドは新年早々、口は災いの元と言う言葉を思い知った。





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