天網恢々粗にしてもらさず 壱
I Love Youから始めよう 2
「あ!こないだの変態!!」
と、俺は叫んだはずだった、いや叫びたかった、叫べなかった…何故なら…
俺の口は奴の口にぴったりと塞がれて、息が…できない…

じたばたと、もがく俺の身体をがっちりと後ろから抱き込んで、セフィロスは余裕で俺の口腔を蹂躙した。
息苦しくなって開いた歯の間を、舌が滑り込み、舐めあげる。
堅くとがらせた舌先が上顎の裏をたどる度に、ぞくり、ぞくりとしたモノが背中を駆け上がり、自然身体の力が抜けていった。
絡ませられた舌に抵抗もできず、一方的にしびれる程吸い上げられ、しだいに頭がぼーっとなってくる、もうどうなってもいいような…

フシギダ、オレハコノカンカクヲ、シッテイルキガスル…

身体をなでる掌が心地よい。ぼんやりとそんな事を考えて、いつの間にかセフィロスにしがみついている様にして立っている俺の身体に、突如衝撃が走った。

「何をする小娘。」
氷でできたような極低温の冷たい響き、ようやく解放され、はふっ…と自分でも悩ましいと思えるような息をついた俺の目に映ったのは、怒り心頭のティファの顔。

「そっちこそ、クラウドに何するのよ!」
見ればティファの正拳突きが、セフィロスの掌で止められている、そういやティファの奴、少林寺拳法10年以上習ってるんだっけ。

「何?久しぶりに会った恋人に、挨拶してはいかんのか?」
そう言ってもう一度、ちゅっと、愛しげに俺の唇にキスをするセフィロスに、ようやく俺は正気に返った。

「わー!!放せ変態!!」
慌てて突き飛ばすと、俺の膝はがくがくと力が入らない、よろけたところをセフィロスの力強い腕がすかさず支える。
「久しぶりだったんで強烈すぎたか?腰にきたようだな。」
さっきとはうってかわった、蕩けるような甘い低音。目の前には、端正とだけでは言い尽くせないような、整いすぎた超美形のドアップ。
切れ長の目、通った鼻筋、薄く、それでいて形のいい唇…

だめだ…また頭がぼんやりしてきた…

俺はきっと、うっとりとした顔で、ぼんやりとセフィロスの顔を見つめていたんだと思う。

「クラウド、この人誰?恋人って…本当?」
戸惑ったように聞くティファの声、その声で今度こそ俺は完全に正気に返った。

「わー!!そんなわけないだろ!俺はこんな変態知るもんか!!」
じたばたと暴れる俺を見て、セフィロスがにやっと笑う。
「つれない事を、この間極上の肌を味あわせてくれたばかりだと言うのに。」
「クラウド…」
信じられないものを聞いたというティファの声に、俺は真っ赤な顔で否定した。

「違う!ちがーう!!この間喧嘩して気を失った時、気がついたらこいつに手当てしてもらってたんだ!!」
叫ぶ俺の顎をくい、と持ち上げセフィロスが極甘の声で囁く。
「楽しい手当だったな、一糸まとわぬおまえの磁器のような肌に唇を滑らせると、徐々に桜色に染まっていって、上がる声は切なくて、舌先で乳首を突いた時にくっと、唇をかむ顔がまたそそられて…」
「やめんかー!勝手に作るなあ!!」
ティファがおずおずと口を挟んだ。

「クラウド…もしかして動けないでいるところを、この人にレイプされたの!?」
「失礼な、ちゃんと同意の上だ、全然抵抗しなかったしな、クラウド。」
「ちがーう!!俺はあの時、あっけにとられて動けなかっただけだーー!!」
「クラウド…じゃあやっぱり無理矢理この人に…」
「だから手当てされただけで何もされてないって!!」
「そう手当だな、やさしーく甘ーいディープキスの後、俺の唇と指先で全身くまなく愛撫してやったし。」
「おまえはいい加減にしろーー!」
たいがいに切れかかった俺が、肘打ちしようと思い切り腕を振り上げたときに、後ろから担任の声が聞こえた。

「ああ、ここにいたのかセフィロス、なかなか戻られないから探しにきたぞ。」
そして、真っ赤な顔でセフィロスの腕の中で暴れている俺を見て、いぶかしげな顔をする。
「何をやってるクラウド?セフィロス、クラウドがどうかしたのか?」
親しげな口調、ひょっとして先生この変態と知り合い?

「いや、ちょっとしたコミュニケーションだ、では行こうかヴィンセント。」
ようやくセフィロスの腕から解放された俺に代わって、ティファが訪ねる。

「先生、この人と知り合いなんですか?」
「ああ、私の知り合いの息子だ。」
あまり年が違わなそうに見えるヴィンセント先生とセフィロス、それなのに知り合いの息子…
「先生っていくつでしたっけ?」
「それは聞かない約束だぞ、ティファ。じゃあ二人とも急がないと次の授業に遅れるぞ。」

いつも通り年齢の話題になると、あいまいな返事しかしないヴィンセント先生は、そのままセフィロスト一緒に職員室の方に行ってしまった。
あとに残されたのは、少々毒気を抜かれた俺とティファ。

「…ったく、あいつどういうつもりだ。」
その呟きに、ティファがはっとして尋ねた。
「ところでクラウドさっきの事だけど…」
その後俺が質問攻めにあって、本当に俺とあの変態の間には何もなかった事を証明するのに、多大な努力を要したのは言うまでもない。

そしてその頃セフィロスは…
「間違いないのかセフィロス?」
「ああ、間違いなくあそこに封印されている、まずいな。」
「今まで何事もなかったというのに、やはり千年に一度の星回りか…大丈夫か?」
「ヴィンセント、俺を見くびるな大丈夫だ…さっき型代も手に入れたしな。」

懐から取り出された人の形に切り抜かれた1枚の紙、それにふーっと息を吹きかけるとセフィロスはにやりと笑った。
視る者が視ればその瞬間から、それがただの紙でなくなったのが解る。
視る者…ヴィンセントは呆れたように呟いた。

「おまえ、さっきやっぱり…クラウドはまだ何も知らないんだぞ、ちょっかいだすな。」
「非常事態だ、クラウドの身を守るためにもな。」
きっぱりと言うセフィロスに、ヴィンセントは疑うように聞いてみる。
「本当にそれだけか?」
「俺の実益も兼ねている、当たり前だ、これだけ待たされたんだぞ。」
セフィロスはもう一度にやりと笑った。




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