Encounter …邂逅…  1
「…はぁ…はぁ…」
少年は走っていた…どこまでも続く荒れ果てた大地を…

遮るものが何もない真夏の陽光がちりちりと肌を刺す。
口の中はからからに乾き、べたべたした嫌な感触が息をする度に舌にまとわりつく。
汗は流れては乾きを繰り返し少年の肌に白い筋をつけ、乾ききれなかった汗が時折目の中に入り込む。
それをうっとうし気に拭いながらも決して足はとまらない。
心臓は早鐘をうち今にも破れそうだ、それでも少年は走り続けていた。
どっちに行ったらどこへ着くのかノノどこへ行ったらいいのか…
『…誰か教えてくれ…』
全く初めての土地ゆえにそれさえも解らず、
少年はひたすら走り…いや、逃げ続けていた。
少年の名はクラウド・ストライフ、田舎からミッドガルを目指して旅をしている途中。
彼は知らなかったのだ。
白磁の肌と陽の光を融かしたような明るい金の髪、夏の大空を映したような蒼天の瞳。
何よりも見るものを一瞬陶然とさせる少女と見まがう美貌…
故郷の村で散々仲間にからかわれ、バカにされた彼の大嫌いな持ち物が、
実はたまらなく珍重され、時には金銭にもなる事を…
そしてそれを生業としている者がいる事を…
村をほとんど家出同然で飛び出し、旅を続けた。
それまで村の外に出る事のなかった少年は見る事、聞く事全てが珍しく、
元来人見知りが激しい性格であったにも関わらず、つい浮かれていた。

 大陸間を移動する船の上で初老の男に話し掛けられた。
「子供の一人旅かい?どこに行くんだい?」
「子供じゃありません、もう14歳です。ミッドガルに行くんです。」
「ミッドガルへ?それは遠いな。知り合いでもいるのかい?」
普段の彼なら、見ず知らずの人に答える事はなかったろう。
しかし、男の人のよさそうな笑顔と、旅の開放感が少年の警戒心を鈍らせた。
「いいえ、俺ソルジャーになるために家を出てきたんです。」
「そうか…若いうちじゃないとできない事だな、がんばれよ。」
無謀だと言われなかった事で、クラウドは気を良くした。
それでつい男の申し出を受けてしまった。
「おまえ、ミッドガルへ行っても行く当てがないんだろう。
船を降りたら俺と一緒に来ないか?ミッドガルには知り合いがいるから、
神羅に入るまでの働き口と、住む所ぐらい頼んでやるよ。」
それは、確かに有り難い申し出だった。書類選考に通り、
ミッドガル目指して出てきたものの、2次試験と最終試験が終わった後は発表まで2週間ある。
そして合格したとして、神羅の会社に入社できるのは9月。
今が7月の初めだから2か月近くはどこかに滞在先を決めなくてはならない,
行く当てなどなかったのだ。

大人ぶって粋がり、都会の華やかさに憧れる少年。
それがどんなにある人種にとってだましやすい存在かノそれを知るにはクラウドはまだ幼すぎた。
ジュノンに着き、ミスリルマインを越える道筋、男はいろんな話をしてくれた。
自分はいろいろな大陸を回って広く商いをしている事、
そのためにあちこちに顔が利くので何かと頼りにされる事、
神羅にも知り合いが多いのでクラウドにも紹介してくれると言った。
それでついクラウドも気を許し、自分が英雄セフィロスに憧れてソルジャーを目指している事、
ソルジャーになるまでは村に帰らないと決めている事などを話したのだ。
それをニコニコと人のいい笑顔で聞く男の目の奥に、危険な光があるのも知らずにノノ

カームに着いた夜、昼間の旅で疲れて、男の知り合いだという家の一室のベッドに寝ていたクラウドは
いきなり叩き起こされた。
気が付くと見知らぬ男達に取り囲まれていた。しかも、どうみてもカタギとは思えない,
その中に一緒に旅をしてきた男の姿があった。

「…な、なに?…」
男はそれには答えず顎髭を生やした男に言った。それは階下のパブの主人だった。
「どうだい上玉だろ?女でも中々いないぜ、こんな上物は。」
「そうだな、肌を見せてみろ。」
パブの主人がそう言うと、いきなり屈強な二人の男に羽交い締めにされた。
「何するんだ!!」
抵抗する間もなくシャツの前をはだけられる。
「下も見せてみろ。」
下着ごとズボンが引きずりおろされ、クラウドの白い裸身が月明かりの中にさらされた。
透き通る蒼いともいえる白い滑らかな肌、
いきなり裸にされて震えている胸の上には、色付く紅い果実が二つ、
外気の中でツンと立って妙に淫猥な印象を受ける。
それにつづく滑らかな腹部の下では,まだ幼い少年自身が震えながらも自己主張し、
形のいい大腿から、すんなりと伸びた折れそうなほどに細い足首が劣情をそそる。
月の光を吸って銀糸を交えて光る金の髪の間からは、怯えて色を深くした蒼玉の瞳が見えかくれし、
鼻筋の通った鼻梁の下では、珊瑚色の唇が言葉を紡げずに真珠のような白い歯と紅い舌を覗かせていた。
少年特有のまだ発達しきれていない身体の線と、少女のような容貌ノ天使のようなセクスレスな清冽美。思わずこの手で踏みにじり、思うままに汚してやりたいような、残虐な気持ちにさせる。

「ほお…。」
男は感嘆したようにクラウドの裸身を上から下まで舐めまわすように見た。
その声に今まで余りの事に呆然としていたクラウドが怒りと羞恥にまみれて叫ぶ!
「あんたたちは何なんだ!?俺をどうする気だ!?」
「威勢がいいじゃないか。」
そう言いながらいきなり胸を撫で回され、クラウドは顔を紅潮させて叫んだ。
「やめろ!!放せよ!」
男はにやりと嫌な笑いを浮かべる。
「いい肌触りだ、手に吸い付くようじゃないか。」
その手から逃れようと身を盛んによじらせるが、両側からがっちりと押さえられているので、
身動きすらできない。
「やだ!放せよ!!放せ!!」
胸の紅点を摘むようにねじられ低く呻く。
「つっノやめろ!」
自分でも自覚せずに身体がびくんと震えた。
「感度も悪くないようだ。8万でどうだ?」
クラウドをつれてきた男が首を振る。
「冗談でしょう旦那、これだけの上物ですよ。俺がどの位この商売をしているかごぞんじでしょうが、
  相場ぐらい知ってますよ。」
「よく言うぜ、ほとんど元手もかかってない癖に。だが確かに上物だ、きりよく10万でどうだ?」
その一生かかっても縁が無さそうな膨大な金額が、自分を売買するための数字だと呆然とクラウドは理解した。
「ノ俺をどうする気だ?俺は男だぞノ?」
クラウドをつれてきた男はにやりと笑った。
「ああ、おまえは田舎育ちだから知らないかもしれないがな、ちゃんと男でも客は取れるのさノここでな。」
いきなり双丘の中に指をねじ込まれた。
「つっノ!やだ!やっノ」
痛みよりも中で蠢く指のおぞましさノ
「やめろ!まだ傷を付けるんじゃねえ!仕込むのは初見世に出してからだ。」
指が抜かれほっとするのと同時に、男の言う意味を正確に理解し足がガクガクと震えだす。
「ノ騙したな!?」
「騙す?ちゃんとミッドガルでの仕事と、住む場所を紹介してやったじゃないか?お前はミッドガルの娼館に売られたんだぜ。」
「嫌だ!俺はそんなつもりで出てきたんじゃない!!」
「嫌だと言っても、もう決まっちまった事だからな。
  旦那こいつ大人しく初見世に出そうもありませんぜ、先に仕込んだ方がノ」
ギラギラした目でみられ、クラウドは吐き気がしてきた。
「だめだ、これだけの上玉だ、初見世にはさぞいい客がつくだろう。
  なーに初見世の時だけちょっと気持の良くなる薬を使ってやりゃいいのさ、
  その後たっぷりと仕込んでやればいい、男を悦ばせる方法をな。」
男達の言葉に身体が小刻みに震えだす。
怒り、悔恨、絶望、恐怖ノノ
大人しくなったクラウドを見てパブの主人は男達にクラウドを放すように言った。
がくりと力なく身体が床に崩れ落ちる。
「坊主、大人しくしてりゃ痛いめにはあわせないからな、大人しくしてろよ。」
ドアにかちりと鍵がかけられた気配がした。

一人になり、慌てて服をまとい、クラウドは震える身体を抱き締めた。
『ノ気持ちが悪い…吐き気がする…』
男達に触られたときのおぞましい感触が身体に残っている。
全部剥ぎ取ってしまいたい!!ここも村と一緒じゃないか!俺を外見だけで女扱いする!!
屈辱に塗れさせる…
クラウドはゆっくりと深呼吸を繰り返した、身体の震えがとまってくる、
村でも落ち着くためによくやっていたしぐさだ…
恐慌が収まってくると怒りの感情が湧いてくる。
『俺はソルジャーになるために村を出たんだ!娼夫になるためじゃない!!』
そう思うと頭が冷静に働きだした、村を出て以来フワフワと落ち着かなかった感情が静まり、
いつものクラウドになってきた。
村では味方はほとんどいなかった、喧嘩の時だって自分一人で考え、行動し、
そして自分より身体の大きいやつらをやっつけてきた。
『…まずはここから逃げる事だ…』

部屋の時計を見る。
少しクラシックな木製の時計は1時を回ったばかりだった。
『店を閉めてすぐの時間らしい』
クラウドはそう判断する。
しばらくは連中も起きているだろう。
ふと、外の話声が聞こえてきたノドアに耳をあててみる。
「…商談まとまって下は酒盛りだって言うのに、オレだけここでガキの見張りかよ…
  ちぇっ、鍵掛かってるんだから逃げられはしないだろうによ。」
「あんな上物めったにないから、旦那達も慎重なんだろう?ぼやくな、
  ほらお前にも酒もってきたから。」
「おっ、こりゃ上物じゃねーか!旦那達も気前がいいねぇ。」
「それだけあのガキが上物だって事だ、逃がしたらどやされるだけじゃすまねーぞ。」
「解ってるって!大人しく一杯やりながら見張ってるとするぜ。」
一人男が去る足音がし、どかっと座り込んで瓶をあける気配がした。
自分を売買する金で下であの男達が酒盛りをしているらしい、無性に腹が立ったが、
今はそんな事より逃げる事だ。

窓に近寄って外を確認する。
窓は外から太い格子がはめ込んであり、身体が入る大きさではない。
元々この部屋は自分のように騙してつれてきた人間を閉じ込めるための部屋ではなかろうか?
とすると内側から抜け出せないような作りは万全だろう。
『…どうする?』
クラウドは自問自答した。
とすると出口は一か所しかない。
しかもこの部屋に来るときは階下のパブを通って階段を上がってきたのだ、
おそらく下から聞こえてくる騒ぎから連中はそこで酒盛りをしているのだろう。
『…待つ事だ…』
それしかない、相手の油断に付け込むしかない。
ベッドサイドテーブルの上の、夕食で食べ残したリンゴとパンをリュックにし舞い込む。
クローゼットを開けてみた、膝掛けぐらいの大きさの古いブランケットとカーディガンを見つけ、
それもしまう。
そして、リュックの中からナイフを出し、シーツを切り裂くと縄をないはじめた。
チラ、チラ、と時計を見ながら…
『あせるな、まだ早い。あせるな…』
何度も含むように自分に言い聞かせ、縄をなう。
待っている時間は長い、しかしここであせったら全てが無駄になる。
オレはソルジャーになるんだ…
…クラウドにとって気の遠くなるような時間が過ぎていった。
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