|
日だまり
|
|||||
| ぼんやりと目を覚ます、視界に入る銀色の糸は、新年の日の光を吸って、きらきらと美しくかがやいている。 同じ色に輝く伏せた長い睫毛、通った鼻筋、薄い唇…… すーすーと寝息を漏らす顔を、独占出来る喜びを、クラウドは改めて噛みしめていた。 どうやら眠ってしまっていたらしい、年末に大規模なテロの未遂事件があり、夕べ遅く帰ってきた。司令部の留守番をしているザックスに、差し入れをして帰ってきて、サンルームでお茶をしていたのだ。 南側にあるサンルームは、元々はカウチソファーとテーブルが飾りの様に置かれていたが、セフィロスが一人で住んでいた頃は、あまり使われていなかった。 クラウドが一緒に住むようになって、秋から冬になるにつれて、サンルームで過ごすことが多くなったクラウドの為に、セフィロスは、家具を全て取っ払い、代わりに広いマットを敷いて、手触りの良い厚手の毛皮のラグを被せる。 北国育ちのクラウドは、元々太陽の光を好む。故郷では冬の短い時間に顔を出す陽の光は、本当に貴重だった。 クラウドがサンルームにいれば、自然セフィロスもそこにいる事がおおくなるのだが、二人で横になるにはあまりにカウチだと狭すぎたのだ。 ごろ寝のスペースができて、ご機嫌のクラウドの横に自分も寝転がり、話しをしたり、本を読んだり、自然とこの部屋で過ごすことが多くなり、今では休日は、二人ともほとんどここで過ごしていている。 薄いレースのカーテンを透して降り注ぐ光は暖かい、触れている所から伝わってくる体温も温かい、少し身体をずらして、たくましい胸に頬を寄せる。 とくん、とくんと聞こえる心臓の音、ゆっくりと上下する胸郭、自分の側で無防備で、安心しきって眠るセフィロス。 愛しい、愛しい…… 愛しい、愛しい…… この言葉では足りない、でも他の言葉が見つからない、俺はどうしたらいいんだろう? セフィロスを愛している、セフィロスが愛しい、セフィロスが…… 俺はどうしたらいいんだろう? 不意に涙が溢れてきた、どうしようもなく幸せで、どうしようもなく切なくて、時をこのまま止めたくて、でも、そんなことが出来るはずはなく。この幸せな瞬間を切り取りたいのに、永遠にこのままでいたいのに…… 「どうした?何が悲しい?」 突然響いた声に、びっくりして起きあがろうとすると、抱き込まれていた右腕に、そのまま押さえ込まれてしまった。 「起きていたの?セフィロス。」 「おまえが目を覚ました気配でな。」 「教えてくれればいいのに。」 「そうしたら、おまえが起き出してしまうじゃないか、せっかく昼間から『抱っこ』できるのに。」 そうして抱き締め直されて、クラウドは初めて気がついた。お気に入りのクッションではなく、セフィロスの腕枕で眠っていた事に。 「腕、痺れてない?」 「大丈夫だこのくらい。」 「本当に?」 「一度やってみたかったんだ『恋人同士』らしいだろう。」 クスリと笑う悪戯っぽい顔に、引っ込んだ涙が、又溢れてきた。 その涙を指で拭って、セフィロスが問う。 「本当にどうした?母親が恋しくなったか?」 「すぐに子供扱いして!」 からかわれたと思ったクラウドは、セフィロスが思いの外真剣な顔をしているのに気がついた。 そういえば、年が明ける前に、帰省しなくてもいいのかと、散々聞かれたのだ。それが、セフィロスの思いやりだというのは解っていたが、そんなに自分と離れたいのかと言って、逆に困らせてしまった。 「セフィロス、俺言ったでしょう?母さんといるよりセフィロスと過ごしたい。」 「なら、どうして?」 「幸せだから、幸せすぎるから涙がでちゃったんだ、自分でもびっくりしたけど。」 「クラウド……」 セフィロスは、金色の髪を優しく撫でた。 「俺、幸せだよ、あんたとこうして過ごせて、本当に……幸せすぎて、幸せすぎて怖いくらい……」 そう言って、また溢れてきた涙のひとしずくを、セフィロスは優しく唇で吸い取った。 「クラウド、俺はおまえに、そう言って貰える価値のある人間なのだろうか……」 迷いを含んだ不安げな顔に、クラウドが笑う。 「セフィロスだから幸せなんだ、セフィロスだから側に居たいんだ。」 解って欲しくて、懸命に笑う。 「そうか。」 「そうだよ。」 もう一度触れる唇、今度はクラウドの唇に。優しく何度も啄み、ゆっくりと深く合わせる。 触れる柔らかさ、温かさ、胸の奥にじんわりと染み渡る甘い様な、切ないような、不思議な感覚。 これが幸せなのだろう、この感情が……そうか、そうなのか。 「ようやく解った。」 唇を外しながら、セフィロスが呟いた。 「何が?」 「『新年を迎える』と言う意味だ、たかだか暦が変わるだけで、どんな意味があるのかと、今まで思っていたが……」 指先で、柔らかくクラウドの唇を撫でて笑う。 「来年もおまえとこうしていたい、そういう事だろう?『新年を迎える』というのは。」 「セフィロス……俺も、俺も、ずっとこうしていたい、来年も、再来年も、ずっとあんたとこうして……」 再度降りてきた唇に、言葉が途中で飲み込まれる。それでも思いは伝わって…… 柔らかな冬の日差しの中、心地よい時間が穏やかに過ぎていった。 top |
|||||