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セフィロス先生の幸せな秋の一日
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たったったった… 軽い足音がとぎれなく続き、学校指定のジャージを着た生徒が列を作って次々に走ってくる。 晴れ渡った青い空、鱗雲が優しく日差しを遮り、真夏の様なギラギラの暑さを感じない。 室内で仕事をするのがばからしくなる、そんな秋晴れの絶好のアウトドア日和なのに、セフィロスは不機嫌だった。 …かったるいな、まあしかたないか… 退屈げに髪をかきあげながら、生徒の列をながめている。 今日は全校参加のマラソン大会、学校の周囲の5キロのコース。 教師たちはコースの適所に配置され、事故に遭わない様に、又気分が悪くなった生徒を早めに収容できるように気をつけなければならない。 3年生の担任であるセフィロスも嫌も応もなく、配置されているわけだが、ただ何をするわけでなく、立っているだけというのに非常に飽きてきていたのだ。 …こういう時に隣にいるのがクラウドなら退屈しないんだが… しかし、彼の愛しい少年は、悲しいかなこの場にいるはずもない。 隣にいるのは50過ぎの国語の教師、10月もなかばだというのに強い陽射しに汗をふきふき、のんびらーっと話しかけてくる。 「いやぁ今日は暑いですな、こんなに暑いとこたえますよ、セフィロス先生はちっとも汗をかかれませんが暑くないんですか?」 「いえ、暑いですよ。」 「そうですよね、もう秋だというのに毎日暑くて…」 さっきから意味のない会話の繰り返し、イライラは頂点に達しようとしていた。 夏休みまではクラウドと同居していた、「同棲」ではなく「同居」なのはその頃はそーゆー関係ではなかったいう事だ。 クラウドの母親が入院して、バイトでオーバーワークぎみのクラウドをむりやり同居させて衣食住の面倒をみてやっていたのだが、もちろん下心はゼロではない。 最初は警戒心まるだしだったクラウドを、あの手この手で口説き落とし、母親が退院した後同居は終了したが、クラウドの心はしっかりゲット! この間ようやくそーゆー関係になったばかりなのだ。 その後週末ごとに自分の家に外泊させることができるほど、クラウドの母親を騙くらかし…もとい信用されているにも関わらず、あまりに大事すぎて片手の指の数ほども頂かせてもらっていない。 そっちのイライラも溜まっているといえばいるのだが… 「いやぁ、暑いですな。」 断じてそのイライラだけではないぞ、と、何度目かの意味のない返事をしながらセフィロスはため息をついた。 たしかに暑くなってきた、真夏の焼け付く感じはないのだが、10月だというのに陽射しは強く、かなり眩しい、おまけに今日は風もないときている。 …こういう天気の日にマラソンとはな、2、3人ぶっ倒れる奴が出るだろうな、朝から飯を食ってない奴とか、夜更かしした奴とか… ぼんやりとそんな事を思ってふと気がついた、全部やりそうなやつがいるじゃないか! …まさかあいつ、今日は朝飯抜きできていないだろうな… クラウドの母親は市場の手伝いのパートをしているため、朝食を作っていく時間がない、それでクラウドは朝食代と昼食代はちゃんともらっているのだが、家の経済状態のために節約してよく朝食を抜いているのだ。 ついでに昼食はパンを1、2個…身体にいいわけがない。 この間それに気が付いて、同居していた時の様に、手作りの弁当を渡す様にしたのだが、少し照れた顔をしてぱくつき出すクラウドの顔を見て、怒るに怒れなくなったのだ。 そして授業中の居眠りも、絶対内緒で遅くまでバイトをしているに決まっている。 解っていてもとめられない、一緒に住んでいた時なら四六時中見張ってられたのだが、あいつはすぐに限界を超えて無茶をする… セフィロスが段々不安になって来た時に、案の定というか、予想どおりというかマラソンをしていた数人の生徒が列から飛び出して来た。 「先生、ストライフが倒れました、あっちで休ませてます。」 最後まで聞き終わらないうちにセフィロスは走り出していた。 4、5人の生徒に囲まれ、道路の端にクラウドは寝かされていた、顔色が悪い。 「あ、先生、ストライフ君急に倒れちゃったんです。」 膝枕をしている女生徒がセフィロスに気が付いた。 ふっくらとした太腿の上に頭を乗せているクラウドが、なぜか幸せそうに見えて、ちょっとムカッと来る。 …あとでとっちめてやらねば… 八つ当たりだと自分でも解っているが、恋する男に付ける薬はない、奪い返す様に抱きとった。 「ストライフ、ストライフ。」 呼びかけてぺちぺちと、頬を軽く叩くが返事はない。 唇が乾燥し、身体が熱いが汗がでていない、脈拍も速く、拍動も弱い。 …血圧も少し下がっているな、軽い熱中症か… 不本意ながらクラウドの頭を女性との膝の上に戻し、ウェストポーチからタオルを取り出し、ミネラルウォーターでたっぷりと濡らした。 シャツを胸まで捲りあげる、なかなか日に焼けない白い肌に一際存在を主張する一対の赤い果実、まだまだ発達途上の思春期の身体は妙に扇情的だ。 人前でなければ、あの果実をゆっくり堪能しながら、ねちっこく看病してやるのに… ふらちな事を考えていると、膝枕をしている女生徒が顔を赤らめたのに気づき、舌打ちしたい気分になる。 …あまり見せたくはないんだがしかたがない… セフィロスはさっさと隠すに限るとばかりに、クラウドの胸に濡れタオルを乗せた。 「…ん…んん…」 「ストライフ!?ストライフ!!」 クラウドは軽く身じろぎするが返事はない、乾いた唇がなにかを求めるようにゆっくり動く。 「ん?水か?」 「きゃ…」 瞬間あがった小さい悲鳴に、走っていた生徒までが注目した。 「え?わ!!」 「きゃーvv」 「げげ…」 各種の悲鳴が入り交じる、それもそのはず、衆目の中で堂々とセフィロスはクラウドにキスをしていた。 いや、正確にいうと口移しで水を飲ませていたのだが… クラウドの喉がこくこくと動き、口に含まされた水を飲み込む、柔らかい舌の感触を楽しみながら半分ほどのませた時に、周囲の気配にふと気が付ついた。 ごくナチュラルにその行為をやっていたが、どうやら注目を浴びてしまったらしい。(当たり前だ(^^;)) セフィロスは、極低温の美声で注意を促した。 「何を見ている?まだマラソンはすんでいないだろう、とっとと走れ。」 クモの子を散らす様に生徒たちが列に戻る、セフィロスはクラウドを膝枕していた女生徒にも声をかけた…あくまで表面上はやさーしく。 「保健室に連れて行くから、君も戻りなさい。」 「え?でも…。」 「戻りなさい、いいね。」 それ以上有無を言わせず、クラウドを抱いてすっくと立ち上がる。 女生徒はあっけにとられたが、思わぬ目の保養ができて上機嫌でマラソンの列に戻っていった。 彼女が、あとで詳しい話を聞こうと、待ち構えていた同級生にたちまち取り囲まれた事は、言うまでもない。 保健室は無人だった、保健医もマラソン大会にかり出されているのだろう。 クラウドを抱いたまま保健室のベッドに座り、もう一度口移しで水を飲ませる。 「クラウド、クラウド」 耳元で優しく囁きながら、水を飲ませるのを繰り返すと、ようやくクラウドは目を覚ました。 「…あれ?セフィロス…ここどこ?」 瞬間学校の保健室だと気づき、さらに上半身脱がされているのに気づき、クラウドは焦った。 「何やってんだよセフィロス、ここ学校だよ!」 「マラソン中に倒れた奴が何を言うか。」 セフィロスはぎろっとクラウドをにらむ。 …そういや、オレマラソンしてたんだっけ… 「オレ倒れたの?」 おそるおそる聞いてみる、セフィロスがかなりの不機嫌なのが見て取れるだけに、背中に冷や汗が流れた。 「あれほど言ったのに、おまえ又朝食抜きだったな、それと何時に寝た!?」 「だって…」 「だってじゃない、何度言ったら解るんだ…決めた!今日から放課後は家にこい!!」 「え?でも…」 「でもじゃない、バイトなら前の様にオレの仕事を手伝え、解ったな。」 有無を言わせないセフィロスの迫力に、クラウドは一瞬黙ったが… 「駄目だよ、セフィロスがくれる報酬は多すぎる、オレはあれだけのお金を貰う事はしていない。」 「それはオレが決める事だ。」 「だめだよ、フェアじゃない、それじゃオレ、援助交際してるみたいじゃないか。」 すねた様に言うクラウドに、一瞬セフィロスは大きく目を見開いたが… 「援助交際、大いに結構!」 「え?」 次の瞬間セフィロスの唇が重なった、熱い舌が戸惑うクラウドの舌を捕らえ絡み付き、口腔内をねっとりと這い回る。 そのまま食われてしまいそうな熱さ…もう何度も味わった生のままのセフィロスの凶暴な熱、クラウド以外誰も知らない…次第にクラウドは翻弄されてきた。 …お前以外に与えるつもりは毛頭ない、この熱は… とろんとした目元、苦しげに鼻から抜ける様な息、その全てが更にセフィロスを煽る。 …いらない、おまえだけしかいらない… 「なにすんだよ、いきなり…」 ようやく解放されてクラウドが、息をあげながら抗議する。 顔を赤くして、声をかすれさせる様は、この場で食べてしまいたいほど可愛い。 「お前の時間はオレの物だ、全部オレが買い占める、だからあの報酬だ、嫌とは言わせん。」 「でもセフィロス!」 なおも言いかけるクラウドの唇に、セフィロスはそっと人さし指で触れた、見つめる瞳が蕩ける様に甘い。 「おまえはオレに毎日、今日は飯を食ってるだろうかとか、ちゃんと眠っているだろうかとか、いらぬ心配をして胃に穴をあけろというのか?」 なだめる様な優しい口調、柔らかく背をなでる温かい掌… 安心できる、この腕の中にいると、つまらない意地を張っていたのがばからしくなる。 何よりも、その翡翠の瞳にみつめられるともう…逆らえない。 解っていたのだ、自分だって前の様にずっとセフィロスと暮らしたい、側にいたい、たとえ母親を裏切ろうと… 「だからこれは、オレのわがままだ、解ったな。」 念を押す様に言うセフィロス、クラウドは返事の代わりに唇に軽くキスをした。 その後の、はにかんだ様な笑顔が愛しくて、セフィロスはくすっと小さく笑う。 「交渉成立だ、早速だが今日から来い、それと…」 そこで区切って耳元で甘ーく囁く。 「…今日は泊まっていけ、もう限界だ…我慢できそうにない。」 瞬間クラウドの顔が真っ赤に染まった。 「…このセクハラ教師…」 「おまえ限定のな。」 その後保健室は内側から、かちりと鍵がかかった。 そして、衆目の中のキス事件をクラウドが知ってセフィロスを怒鳴り回るのは、この翌日のお話。 とりあえず、今日は思わぬ幸せな一日をすごした先生だった♪ top |
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